第41話 退路はない
森の奥へと進んでいくゴブリン軍団。装備も武器もみすぼらしいが、ゴブリン達は意気揚々としてる。それは多分ブリンが居るから。そんなブリンはゴブリン達の進行の中心で背を丸くしてた。
「大丈夫かあいつ?」
「さあな、だがこうなったらやるしかないんだろう」
「周りに振り回されるって……ほんとうに疲れるんだよね……」
自分達はゴブリンを遠巻きに観ながら気楽にそんな事を言ってる。けど流石にオークの大軍とやりあうのなら隠れてばかりでもいられないだろうけど。多分だけど数はゴブリン達が多いと思う。強い種と言うのはそれだけ絶対数はすくない物だろうからな。捕食者よりも餌が少なかったら、捕食者も死んじゃうんだ。けどその分一体一体の強さがゴブリンの非じゃない。
それは先の戦いでもわかってる。勝ち目なんてあるんだろうか? 自分達が影から手伝ったとして、それでどうなる? オークだって十か二十は居るだろう。そうなったらさっき戦った奴等の倍の数以上……どう考えても厳しい。幾らブリンが居ても……だ。
「勝てると思うか?」
「数によるだろう。今は指揮も高そうだしな。逃げ腰よりは善戦できる筈だ」
確かにドラゴの言うとおり、今ならまだどうにかなりそうな気もする。が、それがそもそも楽観的な推測に過ぎない気もするんだ。ドラゴは力の者だ。目指す場所に向かっていけば必ずたどり着けると信じてるタイプ。けど自分はそうじゃない。どんなに努力したってたどり着けない場所があるって知ってる。種の違いってのはそれほど分かりやすく優劣が出来ることなんしゃないだろうか?
ブリンみたいな奴が出る場合もあるし、進化って事もある。進化をすれば魔物は格段に強くなる。けど逆に言えば……だ。それを出来ない限り、上位種には勝てないという楔なんじゃないか?
その楔を断ち切る術が魔物に与えられた進化であるのならば……彼等は死地へと向かってる事に他ならない。
「まあ最悪ゴブリンだ。ブリン以外は……な」
「それ言うとブリンが離れていくだろう。それに自分達がゴブリンを見捨てたとなったらアイツはこっちに剣を向けるかもしれない」
それがないとは言い切れないだろう。だってまだブリンとは「仲間?」って感じだからな。いや自分的には仲間だよ。けど、ブリンがそう心から思ってるなんて信じれるほど、自分は楽天的じゃないんだ。
「それなら……どうやってもゴブリン達を逃がすべきだった……」
メルルの言葉にぐうの音も出ないが、だからってその手段は無かったじゃん。ブリンという存在を得て、ゴブリン達は盛り上がってた。イケイケだった。これはもう必然だったみたいものだ。そんな時だった。空から何かが落ちてきたのは。意気揚々としてたゴブリン達が一気に静まる。そして視線は落ちてきた何かへと注がれてた。
落ちてきたのはゴブリン。多分先行してオークの動きを探ってた一体。言い知れない恐怖がゴブリン達に張り付く。報告を受けてオークたちもこちらに向かってたのならどこかでぶつかるのは当たり前。わざわざオークの住処まで行軍なんて必要なかった。だって今ここに、オーク達三十の戦士達の姿があるんだから。
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