第30話  名前

 足取りが軽い。頼りになる仲間を得たからかもしれない。道中、色々とゴブリンに質問してく。

 

「やっぱりお前たちは生肉の方がいいのか? てか倒してた人とか食ってたわけ?」

「ぎとは美味くない。心の臓やあたばは食ってたげどな。生が多いがやぐどきもある」

「頭や心臓か……想像するとグロいな」


 どんな味がするのだろうか? 血生臭いような気がするが……そこらへんは調理とかするのかな?

 

「ぞういえば、ぎとは血が一番美味いな。魔力があるがらぎとの血を飲めば魔法がづがえるようになるってづだえられでだ」

「だから魔術師は狙われやすいとか言われてるのか」


 新発見ではなかろうか? てかゴブリンの中でもそうやって続いてきた物があるんだなって思った。それはそうだよな……ゴブリンだって生きてるんだし。

 

「べづにまじゅづじにねらいをざだめてるわげじゃない。ぎとならとりあえず襲う」

「すっげー気楽に襲われてたんだな……でも冒険者とかだと返り討ちにあうかもとかは考えないのか?」


 そこまでの頭はないのか? でも今まで聞いたなかではただの動物とかとは違うし、そこら辺も考えそうなものだけど……

 

「だしかにそれはあるがもしれない。でもぼれたちはいつもぎりぎりなんだ。獲物をむじするなんてできない」

「なるほどな」


 確かにそれなら納得できる。けどゴブリンはそれなりに纏まって行動してるし、狩りも効率よくできそうな気もするが? そこら辺はどうなんだろうか?

 

「ぼれたちはいっじょにいたいからいるわげじゃない。餌はいつだってどりあいだ。ぞれに、このからだは燃費がわるい。だからぼれたちはいつだって飢えてるんだ」

「それじゃあ今も?」

「いや、今はぞうじゃないな。どうじてだろう?」


 不思議そうに首をかしげるゴブリン。どうしてといわれても……てかあれから何も食ってない、なんてわけないよな?

 

「ぐってないな。じんきろくだ」


 なに痩せたいの? 確かに腹は出てるけど……手足は細いぞ。でも一晩以上も食べてなくて平気なら燃費いいのでは? とおもう。何か原因があるとすればそれは……その首元の赤いやつしか原因なさそうだけどな。結局はなんなのかわかってないからな。実際このままで大丈夫なのかはわからない。怒りや憎しみとかで力を増幅させるってのはなんとなくわかってるけど、それ以外の影響とかはこれから次第。

 実際埋め込まれたままじゃ危なかったりしないだろうかと思ったりもしてるんだけど、今の所は大丈夫なのかな?

 

「普通に自分達と同じ食事でも大丈夫なのか? 肉とかないけど……まあその場で調達すればいいんだけどさ」


 毎回そう都合よく肉がやってくるわけじゃないし、倒せるかどうかもわからない。ならやっぱり自分達と同じもの食べられるかは知っとかないとな。

 

「大丈夫だ。まずくでもがまんずる」

「それはありがたい。それと思ったけど、ゴブリンのままじゃなんか嫌だし、名前あったほうが良いと思うんだ」

「なばえ……」

「なんか希望あるか?」

「わからない。ぞれはぎどのかんがくだ」


 なるほど……確かにそうかもな。けどゴブリンは集団なのになまえないと呼ぶ時どうしてるんだ? てか仲間意識がないわけじゃないよな? なら憎しみとか涙とかないし?

 

「びっしょにいるのがぶつうなんだ。だからそのぶつうが壊されるのはなんだか……がなしい? ぞれになばえがなくても困らない」


 そういうものなのか? 魔物はやっぱりよくわからないな。とりあえず名前はこっちで決めていいってことか。

 

「どうする?」


 自分がドラゴとメルルにそう振ると二人共興味なさげに言うよ。

 

「お前……やっぱり変なやつだな。俺は知らない」

「私も……でもどうせなら可愛いのがいいかも……です。ゴブリンだからブリンとか。ごめんなさい」


 なぜに謝るのかは知らないが、別に悪くはないように思える。安易な気もするけど、あんまり凝ったのをつけるのもどうかと思うしな。よし――

 

「お前は今日からブリンだ。よろしくな」

「おうびんげん!」

「だから自分はルドラだっての」


 ブリンには人は男か女。それと子供か大人か老人でしか区別出来ないようだった。これが種族の違いかって自分は思った。名前に意味はあったのか、ちょっと悲しくなる。

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