第10話
連休は、箱根の温泉宿に向かった。
雪が降ったらちょっと運転に自信がないので、ロマンスカーに乗って電車旅。二人で弁当を選んで、ビールも買って、旅気分が楽しい。二人きりで遠出するのは始めてだ。いつものサークルとはまた違う。
「楽しいな」
「はい!」
にこにこして央が言う。
浮かれた気分で宿に着いて、早速館内の温泉へ。あからさまなのは良くないと思いつつも、つい央の裸を見てしまう。正月に見まくったゲイ動画ではあまり反応しなかったが、脳内で央と置きかえれば大丈夫だった。央で自慰できる自分に孝史はしみじみ感心した。しかし、脳内ではうまくいったが、ちゃんとできるだろうか。央は男と経験、あるんだろうな…。
「先輩、見過ぎです…」
「!ごめん」
央が顔を赤くしてうつむく。あからさまにならないようとか思いながら、自分が央を凝視していたことに気づき、視線をそらす。
何となく気まずいまま温泉から出て、そのままの雰囲気で食事をした。個室の食事処で、美味しかったが二人ともあまり話さなかった。そして、部屋に戻ると二組の布団が敷かれていた。
「も、もう寝ます?明日も早いし」
上ずった声で央が言う。
「まだ八時だよ」
「じゃ、ビールでも買ってきましょうか?」
「いや、いい」
自分も緊張しているが、央の方がテンパっているので落ち着いてきた。
「テ、テレビ見ますか?」
「央」
央の手を引き、抱き寄せる。同じシャンプーの香りがする。
「せんぱい…」
見上げる央の顔は上気していて、とても可愛らしい。引き寄せられるように頬に口づける。ちゅ、ちゅ、と音を立てながら顔に口づけて、そのまま唇を食む。
「…っ」
央が身じろぐ。上唇と下唇を軽く挟んで、舌を入れる。舌を絡めると央がびくりと反応する。そのままキスを続けながら浴衣をまさぐると、央ははっきりと反応していた。
「せん、ぱ…っ」
股間に太ももを押しつけていると、央が身をよじる。
「立って、られな…」
崩れそうな央を支えて布団に座る形になる。央を半分横たえて、もう一度キスをする。
もちろん興奮しているが、うまく進められていることに安堵感があった。このへんまでは女の子と同じだし、央も反応してくれている。よかった。
浴衣のあわせに手を差し込んで、乳首を探す。慎ましやかな乳首だが、半分立ち上がりかけていて、少しかすっただけで央が反応する。可愛いと思いながらも他の男に触られたことがあるのかなと思ってしまう。
そんなこと考えちゃダメだ、と思うが追い出せない。央の反応が可愛ければ可愛いほど考えてしまう。
首筋にキスを移し、胸へと移動する。どこを触っても央は敏感で、とても感じやすい。いつもこうなのか?いや、そんなこと考えるな。
乳首にも口づけて、股間に手をやると、下着がじっとり湿っていた。
「や…!」
恥ずかしそうに、でも死ぬほど感じている様子の央にかあっと頭に血がのぼる。興奮する。
下着の上から触るだけでぐじゅりと音を立てて、中に手を入れると央はあっという間に達してしまった。
かわいいし、愛おしい。
恥ずかしがりながら感じている姿は、これまでの彼女の誰より扇情的だ。
なのに。頭からは央のこんな姿を見たこれまでの男と比べられてるんじゃないかという思いが消えない。
大丈夫、うまくできる。このあとのプロセスだって問題ない。そう思うのに、勃たなかった。
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