第8話

「すいません、何か騒がしくて」

二次会に行こうという業界人達の誘いを断った央と二人で帰り道を歩く。少しほっとしている。

「いや、アート業界の人とか会うことないから新鮮だったよ。楓さんもいい人だったし」

央がぱっと嬉しそうな表情になる。

「大好きな叔父なんです、昔から。先輩がそう言ってくれて嬉しい」

「影響受けてるもんなあ」

「うん、受けてますね」

男が好きになったのも、その影響なんだろうか。勢いで聞いてしまいそうだった。

「パートナーも素敵な人だな」

代わりのように、口に出る。央が驚く。

「楓さん、そんなことまで先輩に言ったんですか」

「うん。メンタルが作品に出てるって。愛し愛されてるってさ」

「楓さんってば…」

しばらく黙って歩いた後、再び央が口を開く。

「武田先輩の反応見たかったのかもしれません。俺、好きな人連れてくって言ったんで」

「そっか」

確かに、試されたのかもしれない。

「すいません、なんか重かったですね、身内に会わせるなんて」

「いや、それはいいんだけど…」

意識していなかったが、重いと言われれば重い。その事を負担に思ったわけではなかったが、央の持つ広い世界みたいなものに少し足を踏み入れた気がした。それが少し怖いような不安なような気がした。自分よりもはるかに広いその世界に。


央は相変わらず可愛かった。クリスマスはまったり過ごして、正月はお互い実家で過ごした。央の実家は北関東なので都内からは2時間ほど。

正直なところ、クリスマスに最後までいくのではと思い色々と予習したが、なぜか二人でホラーDVDを見まくることになり、そういう雰囲気にならなかった。

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