君と紡ぐ

宮原にこ

第1話

「武田先輩が卒業しちゃうとさみしくなりますね」

「地味にかっこよかったのに…うちのサークル、もっさりした人ばっかになるじゃないですかあ」

ありがとう、と返し後輩のループを終わらせる。騒がしい居酒屋で卒コンの二次会が続く。孝史が所属していた陶芸サークルはさほど騒ぐようなノリではないので、泥酔しているメンバーはいないが、飲み続けて3時間ともなるとそろそろ酔っぱらいにからまれてしまう。女の子たちは可愛いが、もう卒業というのに遊びで手を出そうとも思わず笑顔でかわす。一通り後輩とも話し、孝史はほっと一息つく。

(もう卒業か。あっという間だったな…)


孝史がこのサークルに入部したのは2年になってからだった。当時つきあっていた彼女と旅行に行った際、陶芸体験が思いの外楽しくてはまってしまった。自分の手で形を変え、美しく焼き上がった器を手にしたとき、すごい達成感があった。彼女が引いてるのを横目にはしゃいだことを覚えている。

学内にサークルがあり、竃も持っていると聞いてすぐに見学に行った。


人気のない部室にはたくさんの器が並べてあり、嬉しくなった。孝史は凝り性なので基礎からきっちりやりたい方だ。土の練りから教えてもらえるかな、と思いながら部屋を見ているとガタンと音がして驚いた。奥に人がいたのだ。


ざわざわと後輩たちが話している様子にはっと我にかえる。

「央先輩だ、珍しい」

「央って辞めたんじゃないの?」

視線の先に目を向けると、確かに沢村央がいた。幹事に頭を下げている。あの日と変わらず、綺麗だなと思う。あの日、孝史は初めて央と出会ったのだ。

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