第2話 その人との出会い


僕はその場で長い間泣き続けた。

カードゲームを始めたのは友達が欲しかったから。

友達と遊びたかったから。

でも、始めたから失ってしまった。

そう、弱かったから失ってしまったんだ。


「どうしたの、何かつらいことでもあったのかい?」

「ぼ、ぼく?」

「そうだよ、君はどうしてそんなに泣いているんだい?」

「僕は、弱いから…弱いから…」

「そうだ、君はなんて名前なんだい?よければ教えてくれないか?」

「倉田マモルだよ…」

「マモルくんか!いい名前だな。つらいことがあったなら話してくれないか?」

「僕ね、このカードゲームで友達が欲しくて、一緒に遊んだりしたくて

始めたんだけどね、でも僕は弱かったからカードも取られて、デッキも川に

落としちゃって」

「そうか、そうだよね。つらいよね。でもね、最初は誰だって弱くて当たり前なんだ。みんな最初は始めた頃は弱くても友達や他の人と遊んでいるうちにもっとこのカードゲームを知りたい!って思うから少しずつ強くなれるんだよ」


僕はその時、みんなは始めから強くて、その中で僕だけが一番弱いと思ってた。

でも、この人が初めはみんな同じって言ってくれてちょっと嬉しかったんだ。


「きみは、もし強くなれたらそのカードを奪った子をどう思う?

やっぱり許せない?」

「僕はね、確かにリョウくんにはカードを取られだけどね、

本当は楽しく遊びたいんだ。友達になりたいんだ!」


そう僕が言うと、その人は笑みを浮かべたんだ。

何か思ったんだと思う。

その時僕にデッキを差し出してくれたんだ。


「よかったらこのデッキを使ってみないか?このデッキはカード1枚1枚は

大して強くないんだ。でもね、1枚だけでは弱くてもみんなの力を合わせれば

その力はいくらでも可能性が広がるんだ。だからこのデッキは君の助けに

なってくれると思うよ。さぁ、勇気出して楽しんで」

「ありがとう、あの、あなたの名前は?」

「そうだな…俺の名前は…」


「テイマだ」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る