1枚の絆

土呂

第1話 弱いから失うのかな

「ほら、アンティールールだ。そのカードよこせよ」

「いやだよ、これは僕の大切なカードなんだ…」

「強い奴が強いカードを手に入れる。それが世の中の掟だろうが」

「で、でも…」

「ほら、よこせ!」


そう言って新田リョウは僕のデッキから1枚カードを取り上げていった。

その1枚は僕のデッキでエースとなるカードだった。


「よっしゃーこれは頂いたぜ!やっぱり俺は最強だー」


「さすがだなリョウ。やっぱりお前は強いな」

「強い奴が弱い奴の上に立つ。それは当然だからな」


周りからリョウを称賛する声が聞こえる。

僕はこのカードゲームを通じて友達が欲しかったんだ。

でも、本当は違うのかもしれない。

僕はカードゲームを始めたことでカードを失い、

みんなからは弱い者扱いされた。


弱い人間は強い人間には勝てない。

僕はいつの間にかそう思い込んでいたんだ。



そして夕暮れの帰り道。

僕は橋の上を通っていたんだ。

僕は俯きながら僕は自分のデッキをカバンから取り出した。


「僕のデッキ、枚数足りなくなっちゃった…」


僕はデッキを手に持って切ない気持ちになっていた。

どうして自分はこんなに弱いんだろうって。


その時だった。

強い風が吹いて僕はデッキを手から放してしまった。


「ぼ、僕のデッキが…そんな」


デッキは川に落ちてしまい僕の目の前は真っ白になった。


ああ、弱いから失うんだ。僕は弱いから友達が出来ないんだ。


その時の僕は自分の弱さを嘆くことしか出来なかったんだ。



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