麦、カレンダー、ボランティア

 麦茶を神妙な顔で注ぎ、ルームメイトの後藤はキッチンカウンターに肘をついてもたれかかった。グラスの中で薄茶色の液体をゆらしていると、ウィスキー片手の飲み屋のお姉さんみたい。優等生のくせにやさぐれて見えるところとか、も。共同のカレンダーにボランティアだの講演会だのと意識高そうな文字を並べて、私の劣等感を散々刺激しているわりには、現実の彼女は親しみやすい。

「なに、後藤。愚痴でもあるの」

「三崎ちゃん、聞いてくれるの?」

「後藤の頼みなら聴いてやらんこともないかなぁ」

 にやり、と彼女が首をかしげる。共犯者みたいな表情の後藤がいちばん好きだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る