漆、パチンコ屋、将棋

「都会には漆黒の闇なんて残ってないもの」

「腹ん中が漆黒ならあるんじゃない?」

 きみは軽口に肩をすくめてみせる。パチンコ屋の前で騒音におびえる無意識の動きと違ってわざとらしい、答える価値がないとでも言いたげな態度。小心者のくせに知り合いには態度がでかいのだから、まったく。

「だいたいきみだってこのへんの出身でしょうに、何を偉そうな。あと単語のチョイスが中学生のセンス」

「うるさいなぁ。心は平安時代の人なの。夜は真っ暗なの」

「和歌も詠めないのに? 将棋も駒で遊ぶしかしないのに?」

「将棋って平安時代からあるの?」

「あったらしいよ」

「ふぅん」

 といってきみが将棋を勉強するなんておもわないけれど。面白そうに目を細めてくれるならまぁ、いいか。

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