パソコン、洋菓子店、畳

「瀬谷洋菓子店、畳んだってな」

 パソコンに向かったまま兄が呟いた。ふうん、と答えながらも私は内心穏やかでいられなかった。家族みんなが好きだったケーキの味を思い出す。たしかに、特徴もそんなになくて時代遅れだったかもしれないけれど。私にとっては思い出に深く繋がった味だった。

「もっと早く知ってたら、お母さんにお供えできたのに」

 私の言葉に、兄は答えてくれなかった。

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