三題噺やってみた(H3BO3)

夏野けい

レモン、里親、喫茶店

 喫茶店を出てすぐに、瑞葉みずはが大きく伸びをした。風に乗ってほのかに人工的なレモンの香りが立つ。


「あの子、元気にしてる?」


 瑞葉が気にしているのは、わたしが里親になった猫のことだ。彼女の家で飼っている猫が産んだ数匹の仔猫の末っ子だった。


「うん、元気。結構やんちゃだよ」


 きょうだいの中で一番どんくさかったその末っ子も、わたしの隣なら似た者どうしだ。自分より強い存在のそばにいるのは、きっと苦しい時もある。たとえばわたしが、きれいで明るい瑞葉のそばにいると時々悲しくなるように。

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