第15話「忍のミッション」

「お前のミッションに変更はない。ネオナチスへの牽制としてもな」

「無用の混乱を避けるためって伝えたけど、実際どうなのかな?」

「概ねその通りよ。あなたの性別を明かすことで事態が却って悪化しかねない」

 忍が危惧したことは政府もまた危惧していたようだ。

「いずれにしろ、やらなきゃいけないことは分かっているよ」

「ネオナチスを牽制しつつ、中保台学園の生徒達と連携」

「その上でネオナチスを打ち倒してこの国を守り切る、だよね?」

「さすがに政府の人間だけはあるな」

「元々はかくまって貰うためだったんだけどね。姉さんが有名人だから」

「戦うことに、抵抗は無いのか?」

 その問いに忍は首を横に振った。

「姉さんが戦えない間はボクが代わりに戦って決めていたからね」

「だが、すまないことをした。本来保護されるべき者が一級戦力なんだからな」

「気にしてないよ。今は戦えない姉さんの分をボクが代わっているだけだから」

「そういうところは純朴だが、危険でもある。気を付けろよ」

 そうやって忍の相手は通信を切った。

「さてと、外見を変える訓練しないといけないね。一緒に風呂入るなら」

 すると忍は服を脱ぎ、近くにある杖を構える。

「マジカルダミー!」

 しかし忍の身体の外見は中途半端に丸くなっていた。

 男性としてのそれも消えてはいないし、偽装の意味が無い。

「これじゃ駄目だな……まあいい、あんま魔力を使いたくはないし解除しよう」

「マジカルアウト!」

 そういって忍は元の身体へと戻っていった。

「改善が必要みたいだね。今度は保険の本を見ながらでもやろうかな」

「ともかく、今日はこのへんにしよう」

 そして翌日。彼は理香子に呼び出されていた。

 転入の翌日、西暦2025年4月5日は土曜日だ。

 ちなみに忍達の住む世界は魔法の発見された西暦2018年を元年として、

新しい暦が作られている。

 その名は魔法歴であり、太陽暦なのはそのままなので月日は同じである。

 その方がコンピューターの混乱を抑えることができる、という理由もある。

 ともかく西暦2025年は魔法歴8年であるが、

魔法歴が制定されたのは2022年で執行されたのは2023年だ。

 つまり魔法歴は8年だが魔法歴の執行からは2年という、

ややこしい状態となっている。

 まあ魔法が発見された年が起点となっているのでその辺は致し方ない。

 それに本題は忍が理香子に呼び出されたということであって、

魔法歴についてではないのであまり脱線してもいけないだろう。

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