ダンジョンマスター
神無月 御疎歌
第1話 ワードナになりたい
「ワードナになりたい。」
ある日の企画会議で僕はそう発言してみた。
ワードナ、そう、あの伝説的な3DダンジョンRPGのラスボスのワードナだ。
僕はゲーム製作会社に勤めている。
設立2年目の小さな会社で、社長が趣味で始めたような会社だ。
主に、スマホアプリ向けのゲームを製作していて…、まぁ、主に、、と言うよりスマホアプリ向けのゲームしか製作したことがないわけだけれども…。
今までリリースしたタイトルは、じゃんけんポンチ、パズルでGo!!、凸凹ウォーズ、パラソルフォールなど・・・。
タイトル名から想像がつくように、チープなお遊びゲームばかりだ。
さっきも言ったように社長が趣味で始めたような会社なので、もちろんゲーム製作のノウハウなんてものはなく、しかも社長の方針が『下手な鉄砲数打ちゃ当たる』という素晴らしいもので最低毎月一本のゲームはリリースするように厳命されていた。
これには、社長なりの考えがあるらしく、
曰く「経験って言うものはいかに本番をこなしたか?だ。だから、とにかく数を作れ。そのうち慣れる。」ということらしい。
社長なりに社歴やノウハウがないのを気にしていたのだろうか?
僕は、事業というものは掛かるであろうコストを算出して、売上げ予想をして、採算が取れる見込みがあるものに着手していくものだと思っていたから
「それでいいのか?」という思いが正直あった。
しかし、予想に反して?というか意外にも11本目のリリースでヒット作に恵まれた。ほとんどゲーム製作の経験がない人間が集まった会社にしてはよくやったと思う。本当にそう思う。もちろん運もよかったのだろうけど。
最初は、製作環境もなく、プロジェクトの進行方法もわからないままの状態で1作目のリリース日だけが決められた。
もちろん決めたのは社長で、それも会社設立の日に社員全員を集めておこなわれたパーティー会場での挨拶で、いかにも今思いついたようにうに告げられた。その時に社長の素敵な方針とやらも社員一同、身をもって知ることになった。
ゲーム製作の素人が集まって、製作環境もない状態でちょうど一ヵ月後に1作目をリリースしろとのご命令だった。
それを聞いた瞬間、会場はざわめいた。・・・当然だと思う。メンバーとは今日、この会場で初めて一緒になったばかりでまだまともに挨拶もしていない状態だし、まだ、オフィスにも足を入れていない。他のメンバーの特徴もわからず、なにもかも未知の状態で一ヶ月後にリリースなんて言われたら、誰だって驚く。あるいは、それを通り越して呆れる。
処女作のリリース日が告げられた後に、社長が何故この会社を立ち上げたのかを説明していたけど、一ヵ月後のリリースが頭から離れずに、社長の話は全く耳に入らず、気が付けば社長の挨拶は終わっていた。
その後、立食形式での食事会になり、それぞれ数名ずつが集まって会話をしながらお酒を飲みつつ、食事をしていた。
その時に初めてメンバーたちと言葉を交わして、やはり話題は処女作のリリース日のことがメインだった。
楽観的な人、悲観的な人、確認点や課題を述べる人、それぞれだったけど、さすが、新しく設立される会社に転職しようという人達なので、基本的には、みんなやり遂げようという気持ちが強いように感じた。
その日の会話の中で特に印象に残っているのは、吉田 巧という元SEの人との会話。
これだけ何もかもわからない状況の中で冷静に、かつ(おそらく)的確にやらなければいけないことをつらつらと述べ上げていた。
「いきなり1ヵ月後にリリースとなると、やらなければいけないことは山積みだね。まずは、開発環境構築。まだ、メンバーがなにを得意としているのかわからないけど、開発環境の構築の経験が深い人が誰か、知らなきゃいけないね。」
吉田さんはそう述べると、僕はごもっともだと思った。開発環境構築で間違いがあると、本番環境にリリースする時にいろいろと不具合が生じて、土壇場で対応に追われることがよくあるからだ。
ほとんどの山を乗り越えて最後の最後で、不具合が出るとか、メンタル的には最大のダメージを受けるので御免蒙りたいのはもちろんのこと、原因の究明が難しく、その最後の最後の不具合対応が出来ずにリリース延期やリリース中止になったプロジェクトと言うものも僕は知ってる。
吉田さんはさらに続けて
「それと並行してどんなゲームにするかの企画。けど、こちらはそれほど心配していないんだ。」
僕は、「企画は大事だろ?」って思ったので
「何故?」と聞いてみた。すると、
「曲がりなりにも、新たに設立されたゲーム会社に就職しようと集まった連中なんだから、アイデアの一つや二つ持ってるだろう?」
と、「なるほど。」とこれには僕も頷き、同時に僕自身も色々とやりたい事があってこの会社を選んだのだと改めて思った。
他にも吉田さんと色々と話したけど、話してる最中にもいろんな人がやってきて、吉田さんも途中で他の人とも話したりと…立食だったので入れ替わり立ち替わり、入れ替わり立ち替わりと…いろんな人と色々と話したけど、その話はまた、後でするとしてその後なんとか処女作のリリースも無事?(とりあえず作った。と言うレベルでとても満足のいくクオリティーではなかった…) 乗り越え、十数回のリリースも乗り越え、冒頭の企画会議での発言につながる。
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