午後10時 コンビニの駐車場
お店から離れた駐車場の片隅に停まる不自然な車に男と女。
見ると歳の頃は二人とも私と同じ世代か。
ルームライトも点けずになにやら会話をしている様子が窺い知れる。
夫婦の視線の交わし方ではない。
女性を降ろした車はブレーキランプを5回点滅させて去って行った。
嫌悪感はない。羨ましくもない。
人生を楽しむことはいいことだし、今、この瞬間しかできないことがあるのは、なにも若い時だけのことではない。
若さを理由にできない年代だからこそ、また違う胸の高まりがある。
どうしてあんなことを、あんな人とと思い返せば恥ずかしいことも、そのときそのときが美しく見える。
普通の顔をしてそれぞれの生活に戻る。
普通の生活を維持するために、自分の大切な時間を待つ。
自分は木村拓哉ではないし、井川遥ではないことは痛いほどよくわかっているからこそ、普通のおじさんとおばさんが車の中で大切な時間を過ごし、それが誰かを裏切ることだと知っているからこそ、男であり女である時間を取り戻せた気がしている。
背徳感は自分を人生の主人公にしてくれる。
人に嫌な思いをさせない、不幸にしないと誓った気持ちはコンビニの駐車場の隅に置いていけるのかな?
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