無人島で人が恋しくなるまで過ごす
こんな幸せなことはない。
この無人島には生活に不便を感じさせない、今、僕が暮らしている状況のすべてがあるとして。
ないものは、人だけ。
こんな幸せなことはない。
海があり、畑があり、愛犬たちがいる。
やらなければいけないことはたくさんある。
スーパーマーケットがあるから食物の不自由はないけれど、食べていくために最低限の労働を自分に課す。
僕一人しかいないから、働かなくても誰も僕を責めやしない。
「働かざる者、食うべからず」
満天の星空の下、眠りにつく前に自分に問う。
「今日はなにをしたのか?」
酒を飲んで、お菓子を食べて、寝ていた。
そんな日もあるさ。
でも、そんな日が繰り返されると僕は自分の存在する意味や価値を見失うことになる。それを極端に恐れる。
労働は身体の心地よい疲れより心を安心させて眠るためのもの。
人が人の存在価値を創造するとは思いたくない。ただ、自分以外の人の生き方を確認して安心する愚かさは捨てられない。
本来は、僕には影響がなければ、誰がなにをしようと関心を持たなくてもいい。
それができないから、この無人島にいる。
こんな幸せなことはない。
人恋しくなんて、なるのだろうか。
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