ここから飛び込め

兵藤晴佳

学校橋

 郡上市八幡町の吉田川に架かる、小学校から桜町に向かう「学校橋」の上で、俺は旧町役場のサービスで借りた自転車にもたれて立っていた。

「ここから飛び込め」

 中学校時代からの悪友の誘いを、俺はきっぱり断った。

「そんな年やないて」

 今年で分別盛りの40歳になる。

「その年でも飛び込むって、見てみい」

 俺のスマホの動画で、禿げた布袋腹のおっさんが新橋から水しぶきを上げる。

「たあけらしい」

 夕べ、こいつのツイートに気づいて、何となく帰りたくなってやってきた俺だが、東京に戻れば妻子がいる。

 同窓会があると強弁して、早朝の新幹線で出てきたのだ。

「飛び込んでみい。変われるぞ」

 確かに大卒で就職して20年経っても、俺はサービス残業と薄給にあえぐ、しがない労働者にすぎない。

「中学校でダメだって言われたやろ」

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