妙なる不幸の調 〜後編狂想曲〜

陸 巴夜

叙唱《レチタティーヴォ》

第0話 昔々


「昔々この星の人たちは『地球』と呼ばれる遠い青い星に住んいました」

「なんで青いの?」

「それはその星の広い海が青かったからじゃないかな?」

「海〜?!」

 子供は驚きます。だってこの星では海はとても怖いところなのです。


「魚に食べられちゃう……」

「それが地球ではね、魚を食べるのは人間の方だったの」

「そうなの? 地球人ツエ〜!」


「人間が強いんじゃなくて魚が弱かったみたいだけどね。

 その内地球は人が多くなって、食べ物や水がなくなったり、住めなくなってきたので地球の人たちは地球の外に住み始めました」

「知ってる! コロニーでしょう?」

「そう。そして私たちのご先祖様は旅に出ました。太陽系を出て、未知なる宇宙へと」

「たいようけいって何?」

「パパに聞いて、そして数々の苦難の末に、この赤星に辿り着きました」




 しかし当時のこの星は海と砂漠だけのとても厳しい環境でした。

 そこで始祖達はコロニーの技術を使って星を改良します。草木を植え、土を作り、ようやく街を作った頃に、化け物が現れます。

 それは元々この星にいた生き物で始祖達が環境を良くしたことで復活してしまったのです。それ以来人類はその化け物との戦いで新しい技術を生み出し、次第に星中に街を作り始めました。


 街はやがて国になり、国々には色々な違いが生まれ始めます。

 すると、国々は他の国が自分達より豊かな事を妬み、自分達との違う事を恐れ、生き方が違う事を憎みます。

 違いを認められない人達は、お互いに喧嘩を始め、やがて喧嘩を裏で操るもの達に煽られて戦争になってしまいました。


 長く続いた戦争で国々は貧しくなり、やがて強い国にまとまっていきました。

 こうして少しだけ平和になった大陸は違う事の素晴らしさを知り始めました。


 違う顔立ちの人に会える楽しさ、知らない料理を食べられる嬉しさ、考えた事もない物や話を知る驚き。私達は自分達と違う国がある幸せに気づき始めたのです。


 皆さんも知らない事を知る楽しさに気づき、いつか本当の平和な大陸を見てみたいと思いませんか? 楽しい未来のためにお勉強をいっぱいして、みんな仲良くなりましょう。





 本を閉じた母親は子供たちを見ます。


「ねえ? 聞いてた?」

「よくわかんなぁ〜い」

「でもこれの読者感想文書かないとなんだから……」

「でもお姉ちゃん寝てるよ?」

「ええっ! いつの間に……」

「ね~、ママじゃよくわからないよ。パパはいつ帰ってくるの?」

「パパはお仕事だから、こないだまで居たでしょう?」

「やだ〜パパぁーうぇぇえん」

 子供は泣き出してしまいました。

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