童殺眼
さわら
第1話 旅立ち
「こんなことを言うと気が触れてと思われるかも知れない。でも、落ち着いて最後まで聞いて欲しい。恐らく突っ込みどころもあるかも知れないが俺が相談ができるのはお前くらいしかいないんだ」
俺、丸山は、特に目的もなくモラトリアムの春を謳歌するフリーターだ。普段はへらへらとわりと楽しい日々を送っているわけだが今日だけは違った。この日、この時、俺はきっといつになく神妙な面持ちだったに違いない。
「どうせろくでもないことなんでしょう」
こいつは高校生の頃からの付き合いになる遠山(OL)、自慢じゃないが俺は腹の底から話ができるやつはこいつしかいない。こいつとは高校一年生の頃にクラスメイトだった。お互いに苗字に山が付くということでダブル山さんなんていう安直で無理やりとって付けたようなあだ名で括られ高校の三年間、共に屈辱を味わった仲だ。
しかし、こいつに対して俺が並々ならぬ信頼を寄せるのはそんな理由ではない。俺はこいつの前で三度小便を漏らしている。
これには深い事情があるのだが…、長くなるので、ここでは割愛しておこう。人前で小便を漏らすことがここまでのオープンマインドをもたらすとは思いもしなかったが、まあ考えてみれば、友達エッチだって色は違えど出るところは同じだ。一度やってしまえばお互いに気心が知れて向き合い方も自ずと分かるというのなら同じこと。つまり俺と丸山は友達エッチならぬ友達放尿プレイの仲なのだ。
「きもちわるい」
丸山はこちらに冷たい視線を浴びせてきた。普通なら怯むところなんだろうが、俺は慣れているので、もっと浴びせてくれても大丈夫だ。
「本題に入ろう」
と俺はテーブルの上に置いてあったアイスコーヒーで喉を湿らせた。
「はいはい、早くしてね」
遠山は少しくたびれた様子をみせている。俺は切り出した。
「つい最近のことなんだけど、朝起きると周りの景色が違っていることに気付いたんだ……。どう違うのかといわれると説明が難しいのだけど、俺にはどうやら普通の人間には知覚できない筈のことがみえるようになった」
「…、ええと、つまり丸山の中でシックスセンス的な何かが目覚めたと?」
「シックスセンスと呼んでいいのかはわからない。第6よりも少し先をいってる気がしないでもないが…、概ねそういうことだ」
丸山の顔からみるみる色が消えた<無色透明>とでもキャッチコピーをつけたいほど、びっくりするほど色が消えた。
「疲れてんじゃない?」
まあそうだろうな。幾ら目の前で小便を漏らした男でも、急に異能に目覚めたなんて言い出したらこじらせ過ぎだろうとドン引きされるのが関の山だろう。
「なあ遠山、会社で一番仲のいい女友達の写真とかあるか?」
「みれるけど、わかった。それで霊視できるとかなんとかなんでしょ? 試してみてよ」
と物分かりの良い遠山はカバンからスマホを取り出し、少し画面を操作してから俺の方に画面を向けた。
「三桁だ」
「は?」
「こいつの経験人数は三桁」
「頭おかしいんじゃないの?」
「これが俺の能力なんだ。俺は世の中の人間が童貞なのか処女なのか、また経験人数や性感帯までもがわかるようになってしまったんだ」
この時の遠山の顔を俺は一生忘れることができないだろう。
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