刀を振るのに、それほど膂力は必要ない。麗愛は長年の経験からそう確信を持っている。

 せいぜい必要な筋肉は、刀を振っての手からすっぽ抜けないための握力と、その振った際の遠心力に耐えるための肩の力と踏み込み切るための脚力と言ったところ。

 刃を相手に叩き込み、剣自身の自重で『叩き切る』剣とは違い、刀は刃を相手に当てて、引くことで『切り裂く』武器。

 板金鎧という厚い防御の上から鎧ごと強引に叩き切る、あるいは突き破るべく重厚長大化の進んだ西洋剣とは異なり――刀はあくまで切り裂くことを主眼に置いている。布を。皮を。肉を。そのための歪曲形状でありそのための片刃なのだから。

 必要なのは、如何に早く、如何に鋭い一撃を叩きこめるか。

 そういった意味では、麗愛という剣士は生粋の刀使いと言えるだろう。

 彼女の動きは究極に無駄を省いた体捌き。刀を振る腕の動き。肩の動き。手首の返し。腰のひねり。膝の屈伸運動。足首の運び。

 それらを決して違えず、連動させ、必ず一定のリズムを以てそれぞれの関節の動きが最適化された流れを生んで刀を振るう。


 ――故に、彼女の一刀は速い。


 そう。あの英雄と謳われるベオルフ=クロウを圧倒するほどに。

 刀身だけで三メートルある太刀が、目まぐるしく上段から、あるいは下段から襲いかかってくる。それを後退することで難を逃れるが、その次の瞬間には袈裟に切り抜かれ、その一撃を剣の腹で受け止めれば、次は左下段からの切り上げが襲ってくる。

 ベオルフの知覚速度では到底対応しきれない速度で、麗愛の刀は早く鋭い。一瞬でも気を抜けば四肢のどれかが、あるいは耳や鼻が――下手すれば目すら切り裂かれるかもしれない恐怖に駆られ、ベオルフは防戦一方に追いやられていた。

 丸で大人と子供の勝負だ。

 そもそもに勝負になっていないと言っても良かった。

 ベオルフの間合いは、一足による踏み込みと剣の尺寸を合わせて二から三メートルが必殺の間合いだ。

 対し、麗愛の間合いは軽くその倍があった。刀の尺寸でまず三メートル。更に一足の踏み込みの距離が三メートルほど。それが麗愛の持つ必殺の間合いだった。

 剣士同士の戦いは、如何に自己の間合いを征すれるかで決まる。

 相手の間合いを見極め、決して相手の間合いに踏み込まず、如何にして自分の間合いで立ち回れるか――それが勝敗を決する決定打となる。

 そう言った意味では、ベオルフはすでに死に体だった。

 おそらく、麗愛には明確にベオルフの間合いが見えている。それこそ実際に円状の色分けがされている位に明確に見えているのかもしれない。

 ――そして麗愛は、絶対のそのラインに、ベオルフの間合いには踏み込んでは来ない。

 そしてベオルフは、自分の間合いに麗愛を取り込むことが出来ない。

 すでに勝敗は決していた。

 いや、始まる前からこの戦いの結末は決まっていたのだ。

 しかし、結果が見えていたとしても、ベオルフは諦めるような男ではなかった。 

 麗愛が悠々と刀を肩に担ぐ様を見据えながら、ベオルフはほんのわずかの間目を閉じ、そして覚悟を決めた。


 ――勝てぬのならば、せめて引き分けに持ち込む。


 死力を決する想いで剣を大きく振りかぶり、大上段に持ち上げる。

 それを見て、麗愛はくつくつと笑った。


「ほう……覚悟を決めたか」

「ああ……どうやら私は、貴女には勝てぬみたいだ。現に、未だ貴方を我が間合いに捉えることも叶わぬままよ」

「当たり前よ。入れさせていないのだからなぁ。それとも、手を抜いたほうが良かったか?」

「遠慮しよう……」


 麗愛が人を食ったようににたりと笑う。


「しかしおぬし……自分があの小倅に言いように使われていることに気づいているのか?」

「《天上の御力》のことならば、私は知った上で手を貸している――説得は無意味だぞ」


 ベオルフは即座に切り返す。

 すると、麗愛は「やはり……」と小さく漏らして首を振った。


「哀れよの……いや、自らが駒と気づいていないのは幸せなことか」


 小さく零れた童女の言葉。だが、静まり返ったこの広間ではやけに澄み渡るように響いたその言葉に、ベオルフは僅かに眉をひそめる。


「一体……何を言っている?」


 ベオルフの問いに、麗愛は呆れたように肩を竦め――担いでいた刀を突きつけて言う。


「戦いの最中、相手の言葉に耳を貸していては剣が迷うぞ? まだまだ若い証拠だな」

「くぅ……」


 麗愛の言葉にベオルフは僅かに唸って見せるのみだった。その様子に、麗愛は実に愉快そうに肩を震わせる。


「若いな。まだまだ若い――だから、見せてやろうか。重ねたよわいの違いとやらをな」


 その瞬間、一気に殺気が膨れ上がった。

 ベオルフが目を剥くのを視界の先に見ながら、麗愛は声を上げる。


「――行くぞ!」


 ――ズダンッ!

 踏み込みの音。

 それがベオルフの耳朶を叩いた時には、麗愛がすでに目前にいた。

振り上げた刀。

 上段からの一刀が迫る。

 反射的に、ベオルフは持ち上げていた剣を引き寄せて、頭上からの一刀を防ぐように構えた。


「――っ!?」


 受け止めた一撃。だが、受け止められたのはそこまでだった。

 麗愛の放った上段からの切り下ろし。それを剣で防いだはいいが――防いだ際に生じた剣圧による衝撃で、ベオルフの握力が消失していた。あまりに強力な剣撃が生み出した衝撃は、剣を通してベオルフの両腕を襲い、一時的にだがその筋力を麻痺させたのだ。

 剣を握ることが出来ず、その手に握っていた〈緋の暁〉が床に落ちて鈍い金属音を響かせるのを耳にし、ベオルフが目を剥くのを見ながら、麗愛はにっ……と笑った。


「今の一撃、よく凌いだ――だが、それまでよのぅ」


 すでに彼女は地面にその足を下ろし、身を低くしながら身体を捻り回転させていた。

 そして――


「――ふんっ!」


 刀を――振り抜く。

 左下段からに切り上げ。

 あまりに鋭い、まさしく神速の斬撃がベオルフの身体を包んでいた鎧を寸断――鎧ごとベオルフの身体に刀が走り、鮮血が吹き出す。


「があっ!?」


 ベオルフの口から、悲鳴が上がる。内臓までは達していないだろうが、切った範囲が広く、流れる血の量は多い。

 何より、寸前でベオルフの握力を奪うほどの圧力を放つ麗愛の一刀だ。刀が纏っていた衝撃が身体を貫き、全身に伝播してベオルフから力を奪い、彼はガックリと膝をついて地に伏した。

 倒れ伏したベオルフを見下ろしながら、麗愛は血振るいし刀を肩に担ぐ。


「さて――敗者は勝者の問いに答えてもらおうか? あの桜色の髪の娘と、斑目の小倅は何処にいる?」


 ベオルフは僅かに逡巡したが、すぐに抵抗の無意味さを悟る。何よりベオルフは麗愛に敗したのだ。彼女の言葉通り、敗者は勝者に従うべきだと判断したのだろう。

麗愛を見上げ、口を開こうとしたその時、二人の頭上から声が響き渡った。



「私なら――すでに此処に居ますよ? 麗愛=マルスタイン」



 かつん……かつん……金属製の板で拵えられた階段を優雅に下りてきながら、白衣の青年――斑目=轟は二人を見下ろしていた。


「やはり……ベオルフ殿では貴女の足止めにもなりませんか。まあ、想定の範囲内ですが」

「良く言うわ。元々捨て駒にするつもりでおったくせに」


 すかさず、麗愛が切り込んだ。麗愛の言葉に、轟が僅かに眉を顰め、ベオルフが僅かに目を剥いて二人を見上げた。

 そんな二人の様子を一瞥したあと、麗愛は着物の裾から紙の束を取り出し、それを轟へと突きつけるように翳す。


「《天上の御力》――というのは、こ奴を駒にするための甘言だったのだろう? 本命を生み出すためのおとりとして」


 麗愛の言葉に、轟は納得したという様子で首肯して見せ、眼鏡の押し上げながら肩をすくめて見せる。


「なるほど……ディーリング君が持ち出した記録媒体メモリィ――あれは、貴女に届けられたようですね?」

「正確には、ニーアを通じて私の下へ届けられたんだ。優秀だろう? お前が人形と蔑み疎む、ウチの稼ぎ頭は?」

「ええ――実に忌々しいですよ」


 麗愛の嘲りに、しかして轟は語気を強めてそう返した。


「それで――貴女は何処まで知ったのですか? この計画の全容の、どの辺りまで」

「まあ、大方すべてだよ。『《天上の御力》を転用した《神の右に座す者》考案』――だったかのう。ヴィルヘイムが解析して私の所に届けられた時には目を疑ったわい。まさか恭一郎の忘れ形見が、こんなことをしでかすとは思ってもみなかったからな」


 麗愛は手にした資料の束を捲り、その一部を読み上げて見せる。


「えー……なになに?

 ――『《天使》――即ち唯一響律式〈天授なる使翼ステウ=エインシェル〉の力を応用し、障壁と化して外部からの絶対不可侵領域を形成する《天上の御力》。そして、《天上の御力》のシステムを応用し、より攻撃性を高めその範囲内における絶対的防衛兵器へと転用する《神の右に座す者》の開発へプロセスを移行』か……なるほど、発想がぶっとんでいるな?」

「……そんな話、私は知らないぞ……」


 麗愛の横で倒れている轟が絞り出すように口をはさむ。


「まあ、教えていないのだから、当然じゃろう。そうだろう? 轟」

「ええ。そうですね」


 存外あっさりと、轟はそのことを肯定した。逆にベオルフが粟を食ったように慄き、轟を見た。


「これは――どういうことだ! お前は、《天上の御力》を以てして、TTBの恒久平和のための防衛機構を作るのではなかったのか!」


 ベオルフの問いに、轟は至極面倒くさがるように溜息を洩らし、仕方がないと言った様子で答える。


「元はまあ、そういう発案の下に始動した計画でしたよ。ですが、途中で方向転換したのですよ。ただそれだけのことです」

「なん……だと?」


 いけしゃあしゃあとはこのこと。轟は澄ました顔でベオルフの言葉に即応して見せた。が、それが逆にベオルフの神経を逆撫でする。

 が、そんなことは轟の知ったことではないのだろうと、麗愛は掌で踊らされていたベオルフに微塵の同情をくれてやりながら、麗愛は降りてきた轟に刀を突き付けた。


「轟よ。今すぐあの娘をこちらに引き渡し、その《神の右に座す者》とやらを廃棄しろ。さもなくば――」

「――切りますか?」

「応」


 肩を竦めて切り返した轟に、麗愛は即応する。

 麗愛の返答を受けた轟は、「困ったものです」と口で言いながら、その実口元が楽しげに笑っていた。

 そして、両手を腰のベルトに吊るした剣帯に伸ばし――それを抜剣。二振りの小剣を手に取り、彼は堂々と答える。


「残念ですが――どちらもお断りしますよ。すでに《神の右に座す者》の起動は最終段階……もう止まりませんよ。アレは」

「――この痴れ者が!」


 ケタケタと笑う轟の応答に、麗愛は怒号しながら地面を蹴って間合いを詰めると、残像すら残さない速さで抜き打ちを放つ。

 だが、そこで麗愛の目が驚愕に見開かれる。

 必殺の意志を込めて振るった神速の一刀。ベオルフでさえ手も足も出なかった麗愛の刀技を、轟は僅かに身を退けることで難なく躱して見せたのだ。

 彼の所業に、麗愛も――そして寸前まで対峙していたベオルフも驚愕し、言葉を失って動きを止めた。

 その隙に、轟が二刀を手に麗愛へと肉薄する。

 左右の小剣が時間差で、そして異なる角度から麗愛へと振り下ろさ、あるいは切り上げられる。


「くっ!」


 咄嗟に麗愛は刀を引き、地に突き立ててそれを軸に身体を中空に持ち上げ――そして跳ぶ。柄頭を足場にして轟の背後に飛び退き、柄頭に結ばれている長い飾り紐を摑んでそれを引くと、繋がった刀が麗愛の手元へと納まる。

 が、それと同時に轟が間合いを詰めていた。

 完全に死角を突き、更には予想だにしない動きをして見せたにも拘らず、轟はそれに対処して見せ麗愛へと迫った。

 二刀が再び麗愛を襲う。そして――


「くあっ!?」


 その口から小さな悲鳴が漏れる。轟の左の小剣が、麗愛の脇腹を割いたのだ。

 次いで右の一刀が突き出される。麗愛の死角――彼女自身の刀で見えなくなっていた死角をついた刺突の一撃が彼女の左足を穿つ。

 彼女の最大の強みである機動力が断たれ、先ほどまでベオルフを圧倒していた麗愛が、轟の手によって一方的に嬲られるという信じ難い光景が繰り広げられ――


「――かはっ!?」


 轟の右の剣が、麗愛の胸を貫いた。

大量の血が傷口から溢れ出し、麗愛が轟の件によって壁に縫い付けられ、脱力して刀がその手から零れ落ちる。

 突き貫いた麗愛を見下ろしながら、轟は無表情に言った。


「貴女はこれでも死なないでしょうが――邪魔をされては面倒ですし、しばらく此処で大人しく成り行きを見守っていなさい」

「ぐぅ……とど……ろきぃ……」


 わずかに、血であふれた口からそんな声が漏れたが、轟はそれを無視してベオルフのほうに歩み寄った。

 近づいてくる轟を、ベオルフは未だにうまく動かない身体を強引に動かしてうずくまった姿勢で見上げながら呻きを漏らす。


「貴様……なんという……ことを……」

「もしかして、麗愛のことを言っているんですか? それなら安心していいですよ」


 ベオルフの言葉に、轟はそう答えた。

 そんなはずがあるはずない。心臓を貫かれて、一体何を安心しろというのか。

 そんなベオルフの疑問に、轟は至極当たり前のように説明した。


「彼女は、ある特殊な唯一響律式の保持者でして――その影響により半不滅の肉体を持っているんです。

 我が父、斑目=恭一郎の宿していた〈賢者の石ヴァイゼ=シュタイン〉。

 ヴィルヘイム=チャンバーが左目に宿る〈生ける屍ザ・リビング=デッド〉。

 そしてそこにいる麗愛=マルスタインの背に宿す〈輪廻の蛇ウロボロス〉。

 彼らは皆、このTTBが創設される以前の時代から生き続けている、歴史の生き証人ですからね。あの程度では――特に〈輪廻の蛇〉を宿す麗愛は、死にはしませんよ。ただひたすら、痛みに苦しむだけです」

 だからあの程度のことはして当然――そう言い切る轟に、ベオルフは戦慄した。

 狂っている――いや、思えば始めからこの青年は狂っていたのかもしれない。そして、その狂気を感じながら、同じように理想という名の狂気に駆られていた自分も、他者から見れば同じものなのかと思うと、酷く恐ろしく感じられた。

 そんなベオルフに、轟は至極冷徹に言った。


「人の心配よりも、自分の心配をするべきですよ」


 そう言って、彼は持っていた左の剣を何気なくベオルフへ突き立てた。


「ぐうっ!?」


 腹部に剣を突き立てられたベオルフが激痛に悲鳴を漏らす。

 が、轟はそんなベオルフを冷たく見下ろし、


「貴方もそこで、我が《神の右に座す者》の完成をご覧になってください」


 まあ、それまで生きていればの話ですが――そう言い残して、轟はベオルフが使った昇降機に乗って、その場を後にした。


   ◇◇◇


 最上階に戻り、轟は再び端末を操作した。モニターに表示される幾つもの情報に目を通しながら、ようやくここまで来たと感慨に耽りながら頭上を見上げる。

 何かを成すたびに、そこには必ず父の名があった。

 何か成果を出せば、そのたびに『斑目=恭一郎の息子』という評価ばかりが飛び続けた。それが嫌で嫌で仕方がなかった。

 父が亡きあともそれは変わることなく、このまま未来永劫彼の名を引き摺って生きていくことに反吐が出た。

 だから考え、考え続けた結果が、この《神の右に座す者》だった。

 史上最も偉大なる科学者。

 響律式の生みの親。

 人工生命研究の権威。

 蘇った錬金術師。

 そんな数多の異名を取る父を超えるには、最早彼でさえ達成できなかったことを成し遂げるしかない――その想いの一心で、轟は《神の右に座す者》の開発を続け、そしてついに完成するのだ。

 これでもう、誰も自分を『斑目=恭一郎の息子』などとは呼ぶまい。

 呼ぼうものなら、この《神の右に座す者》の力で消し去ればいい。

これにはそれだけの力が備わっているのだから。

《神の右に座す者》は、あの三二階層でシエラ=F=レッヒェルがやって見せた光の結界の応用した攻防を一体とした殲滅兵器である。

 光の範囲内にいる存在を識別し、任意対象だけを攻撃する光の結界を応用し、その範囲をTTB全域へと広めて何時何処にいても索敵し、攻撃対象を識別したのち、上空から圧縮エネルギーによる攻撃を可能とするように応用する機関――それが《神の右に座す者》。

 最も神に近い存在の力を冠する兵器。

 それを有する轟とは――即ち神に等しい存在となる。

 この《神の右に座す者》を使えば、TTBは轟の絶対な支配下に置くことすら可能となるのだ。


「そうだ……誰も私を阻むことなど出来ない。あの麗愛ですら、ヴィルヘイムですら――ましてや最早存在しない父ですら、私の邪魔することなど出来ないのだ!」


《神の右に座す者》を見上げながら、轟は痛快に笑い声を上げた――その次の瞬間だった。

 建物全体に衝撃が走り、大きく揺れた。

 警報が鳴り響き、館内放送に幾つもの指令が飛び交う中で、轟は端末を操作して呼びかける。


「何事だ?」


 返答はすぐに返っていた。


『敵襲です! 上空から何者かが高圧縮エネルギーを放って建物の外壁を破壊した模様! 只今応戦ちゅ――うわっ!?』

『邪魔だ、どきやがれ!』


 応答した警備隊員の声が途切れ、その向こうからかすかに聞こえた声に、轟は力の限りで端末に拳を叩き下ろした。

 此処に来て――此処に来てなお、私の邪魔をするのか。


「忌々しい……父の人形――!」


 端末の端――モニターに映る黒衣の少年の姿を見て、轟はあらん限りの負の感情を込めてその名を叫んだ。


「ニーア=ゲイル=アシュリートぉぉぉぉ!」


 室内に、轟の絶叫が木霊した。

 そして――

 その彼を呼ぶ轟の声に、


「――ん……にー……あ……くん?」


 かすかにその名を呼んだ寝ぼけ声がかき消されていた。





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