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銀世界ニ闇ト羽根
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リノとテスタ その1
とある港町。とある市場。
午前中の太陽が照りつけるちょっと暑い日のこと。
あたりは行き交う人々で賑わっていた。
今日水揚げされた魚達をさばき店頭で販売する男や、魚くさい場所にも関わらず花売りの娘がいたり、ようやく取れた休日からか一家でショッピングを楽しむ奴らがいたりと様々だ。
「・・・っ」
「ねぇーリノにゃんてばぁ〜。わざわざこぉんな暑い日に外でなくても良いんじゃないかにゃ?」
ここに一人の童女とその付き人らしき者がいた。
童女は大衆的な空間には似合わないような黒と白を基調とした絢爛なドレスを見に纏い、付き人は盗賊に似た軽い服装で童女の隣を歩いていた。
一瞬童女が主人のように見えるが、付き人童女のそれだと思われる日傘を自分だけに差していたりと、主従関係があるようにも見えない。
凄い不釣り合いな組み合わせだった。
既に異質な容姿の童女にさらにその状態である、何百人といるこの空間でも、嫌でも目立ってしまっていた。
「ほらみるにゃ!だから嫌だったんよ。」
「・・・?」
童女は自分達に視線が集まっていても、それに気づいていなかったのだ。
「げ・・・もしかしてリノにゃん気づいてないのかにゃ?」
「・・・なに?」
「人の目にゃ!人の目にゃ!周りみるにゃ!」
童女は付き人に言われようやく自分の状況に気づく。
周りに意識を向けるとすぐに人々が視線をそらしたのを感じ取ったのだ。
「・・・わかんなかった」
付き人は大きくため息をつく。
すると被っていた帽子がずれ落ち、中に隠れていたものがぴょこんと真っ直ぐ立った。
動物の耳だった。猫と同じような耳である。
そしてついでに、付き人が黄金色の髪の毛を持つ者だというのが分かる。
「はぁー。リノにゃんの無自覚なところここまで来ると才能かにゃー。」
「・・・テスタうるさい。」
ごす。
鈍い音が響いた。
あたりの喧騒ですぐにかき消されたが、近くにいた人は気づくような音だった。
「いったいにゃあ!もー!!!リノにゃんなにするにゃ!!ひどいにゃ!!暴力反対だにゃ!」
「・・・テスタがわるい」
「まったくどうするにゃ!お腹殴って子ども産めなくなったらどー責任とるんにゃ!」
付き人はお腹を抱え大きくうずくまる。
童女は冷徹にそれを見下しながら言う。
「・・・テスタはおとこだよね」
「あーーー!!!うるさいにゃ!きこえないにゃ!つまんねえこというなよ!だにゃ!!うーー!!!」
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