第13話 スケッチブック
すっかり昨日のことで気を取られていた。朝になり慌てる。
あ、あれ? スケッチブックどこ? ない! どこに忘れたんだろか?
ああ、時間ないし。まだまだ、ページがあったから新しいスケッチブックは用意してないし!
あーもう諦めて学校行くしかない。諦めた私は自分の部屋を後にした。
あーテニス部かな? 一度行ってスケッチブックないから帰るって言い出しにくいなあ。あの子達は今日もネットを用意してるだろうに。
ああ、どこだろ絶対テニス部まではあったんだから。
と一人昨日の自分の行動を思い出していたら、莉子が飛んできた。ん? どうしたんだろ?
「彼氏来てるよ!」
と教室の出入り口を指差す。わざわざ彼氏と言わなくてもいいのに。って! あれ! 涼はスケッチブックを持ってこっちにスケッチブックを振っている。あ、そうだ。慌ててた私は涼の部屋に忘れたんだ。良かった。涼に向かいながら今日も涼描けることに、そして涼のそばにいれることにホッとしてる自分に驚いていた。私がスケッチブックがなくてあれ程慌てていた理由を知って。
「ありがとう。探してたんだ」
「いいけど。テニス部からなら、俺の家までしかなくない?」
「あ、そっか」
「凛って抜けてるなあ」
「うるさい。あ、中見た?」
ニタニタ笑ってる。どうせ涼ばかり描いてたよ。
「じゃあ、またお昼な」
私の頭をクシャっとして自分の教室に帰って行く。
「凛にしては、続いてるねえ」
席に戻ると、莉子はそのまま私の席の前で待っていた。
「にしては、とか言うな」
「だって最長何日」
「5」
小声で言ったのに莉子は聞き逃さない。
「5日だよー! しかも、触られてもいいって。さっきもねえ」
「触られてもって、その言い方!」
「はいはい。手をつなごうとした、肩を抱こうとした、腕を組もうと言われた。って理由で別れてるじゃない!」
そう。そうなんだよね。まあ、付き合ってもいいかと思うんだけど、実際そういう場面になると、それは無理ってなっちゃて、結局別れている。
「そうなんだけど」
「最初に抱き合ってたって聞いて、情報が大げさだと思ったんだけど、今も逃げる様子も嫌がる様子もなし。ましてや少し喜んでるし。私の知ってた凛はどこ? どこいったの?」
「莉子、芝居が入り過ぎ」
「まあ、良かったよ。もう男性不信になってんじゃないかって心配したんだから」
と、いいながら莉子は私の肩をバンバン叩く。痛いって。
「はい。ご心配かけました。男性不信になってません。ってか、なってたら男子テニス部に絵を描きに行くわけないでしょ?」
キーンコーンカーンコーン
「じゃあ」
と、とっとと自分の席に帰る莉子。まあ、いいか。心配はしてくれてたみたいだし。
テニス部に行くと、いつもより気合が入ってる部長がいた。私への視線も痛いです。
「親善試合まで明後日で一週間だ。今まで以上に気合いれてけ!」
「はい」
みんなに檄をとばし、いつも以上に緊迫した練習です。
毎日のハードな練習も、お父さんのとは比べられない程なのか、それとも仲間がいるからか、涼は楽しそうだけどね。
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