とてつもなく白い

タナ

死んだきっかけ

人は考えなければいけない。

これは今までの人生で一番インパクトのある言葉だった。


人はいつか死ぬし、人の解釈はそれぞれだし、例え僕が何かにたどり着いたとしても、そこにどれだけ価値があるのか、そんなことが幸せなのかと本気で考えていた自分に、ある人はこう言った。


「なぜ当然幸せになれると思ってる。図々しいやつだ。」


なぜ不幸になるかもと思いながら行動する?希望のないやつだ!

ただ一つ、この言葉で気付いたことがあった。自分は幸せというふわふわした心地よい概念を使って、都合よく物事を解釈し、人生をサボっていたということだ。出世していく彼らは、なんとか自分の能力を必死に社会に還元しようとしている。人に尽くすということだ。なんとかなるだろうと特に努力もせず生きてきた僕は、不幸を恐れない人たちの努力にあぐらをかいて幸せの定義を歌っていたことになる。なんてクソ野郎だ。


でもこっちの言い分だってある。


「そんなのその人が勝手にやっていること。それが幸せな人なんだろう。俺は違うんだ、押し付けないで欲しい。」


いろんなことが器用にできる人たちを基準にするな。得意不得意は誰にでもある。そういう配慮もできないなんて、なんて押し付けがましい。


だが、先輩にはこう返される。


「私だって最初から簡単にできたわけじゃない。悩んで失敗を繰り返した。悩むことすらせずに、よくそんなことを言えるわね。」


硬直していることが罪だという。

でたでた、「私はこうだった」とか言う奴。俺の人生なんだ、うるさく言わないで欲しい。ただ、人間社会とは結局この差なんだろう。この人生は自分一人のものだという生き方は、プライドが全くのゼロでない限り難しいのだ。人の言葉はしっかり受け止めなければ、いつか一人になってしまう。そこには無が待っている。

目の前の壁を乗り越えてこそ、次の冒険がある。


ただ、どんなに正論でも人には感情があるのだ。

無礼にも自分を否定してきたやつの言葉を、言葉のまま受け止めるのは結構難しい。こう返すしかない。


「うっせーブス、一人で言ってろ。」


世間は冷たいわけじゃない。これは自己防衛だ。

これを繰り返した俺はあまりの情けなさと悔しさにまみれて、追われるように首を吊った。

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