恋の花

こびと

恋の始まり


あの日、私は恋をした。


ワイルドキャッツの優しい彼に。


彼を見つけるたび、胸がドキドキして…つい、彼を目で追ってしまう。


今日も、彼はトロイとチャドとジークと、バスケットボールをパスしたりしながら、楽しげに会話している。


そう、彼はワイルドキャッツの背番号23番のジェイソン・クロス。


時折見せる笑顔に、胸がもっとドキドキした。


それを隠すように、次に作る曲を考える振りをして。


「ケルシー!」


急に聞こえたテイラーの声に、びっくりして割と大きな声をあげてしまった。


クラスは水を打ったように静まり返り、トロイたちが私の方を見た。


全員に見られている、その感覚に耐えきれなくなった瞬間、意識が一瞬飛んでから、教室の天井が見えた。


「きゃあ!ケルシー大丈夫!?」


ガブリエラとテイラーとマーサが慌てて駆け寄って来てくれた。

テイラーは涙目になっていた。


「ケルシー、大丈夫か!?」


ついで、トロイたちが駆け寄って来てくれた。


「保健室行かせた方が良いんじゃない?」


マーサがガブリエラと顔を見合わせながら話す。


「そうね、テイラーとマーサでダーバス先生に伝えて来て貰える?」


ガブリエラが二人に尋ねれば、二人は了承して教室の外へ出て行った。


「わ、私は大丈夫だから!」


私がそう言って慌てて立ち上がろうとした時、不意に伸びて来た腕に遮られて、また床に寝る形になった。


「君は倒れたんだ、無茶しちゃいけないよ!」


ジェイソンに、悲しげな顔で叱られてしまった。


ジェイソンに嫌われたような気がして、何故か泣きそうになってしまった。


「…ケルシー!?ごめんね、僕…怖かった!?」


ジェイソンはそれにすぐ気づいたらしく、慌てて謝ってくれた。


「だ、大丈夫…ただ、その、あの、み、皆に、心配…かけて、ご、ごめんなさい」


私はただ、そう話すことしか出来なかった。


「どうする?僕がケルシー運ぶか?」


トロイがそう言うと、ガブリエラが笑って首を横に振った。


「貴方じゃなく、ここはジェイソンに頼みましょうよ…ねぇ、ジェイソン?」


ガブリエラが笑ってジェイソンを見れば、困惑した表情をしていた。


「構わないけど…何で僕?」


ジェイソンがガブリエラに尋ねると、ガブリエラは「んー…何となくかしら?」なんて笑って。


トロイたちが席に着き、ジェイソンが私に近づいて来てしゃがんだ。


「えっと、その…動かないでね、ケルシー」


そう聞こえた瞬間、身体が浮いたのがわかった。


でも、所謂お姫様抱っこをされている状態だと気づいたのはもうしばらく後のこと。


保健室で靴を脱がして貰い、ベッドに寝かせて貰った。


そして、二人で話をした。

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