第24話謙信も友達

 翌日、最近いつ外出したかな? 全然家を出ていない気がする。これは健康的ではない、散歩がてらに買い物に行こう。

 でも思ったより面白いなゲーム。こんなに長時間するとは思わなかった。お金を儲けるてコンセプトはいいな、儲かると楽しいからね。

 

 いやー好物の枝豆がタイムセールだった。十時前に行って正解でした。早速茹でてビールでも飲むかな、午前中から飲めるってのも隠居生活の醍醐味だな。

 しかし、家族がいる人はいいよねえ。お一人様×個までのものが、別れて並べば、倍買えちゃうんだから、ずるいよねぇ。



 酔っ払ってそのままソファーで寝てた。ちょっと飲みすぎたようだ。今VRするとVR酔いしそうだし、変な生体波形が椅子の開発チームに伝わって驚かせてしまう。[生体データを開発元に送ってます]

 昼から飲んでますとCONNECTに書いてゲームするのも何か嫌なので、ちょっとゲームを休むくらい良いだろ。

 もう少し飲んで昼寝しよう。その分、夜やれば良いや。あれ? 何か思考がおかしくなってる気がする。


 ふあー良く寝た。十五時かあ、風呂にでもはいって酒を抜くかなと。じゃあ、そろそろ再開しますか。マウントギアを装着しゲームを起動。


 ゲーム時間十時だ。商会会員になっても、他のNPC達と違って毎日働きに行かなくて良いらしい。

 そりゃそうだろう。ゲーム内でも毎日出勤とか、日本時間一日につき二日出勤とかになったら勘弁して欲しい。

 

 エルドワに会えていないので薬草が溜まっているはずだし、買い上げないとな。スラム街につくと、エルドワがデッカイボクシンググローブのようなものを装備していた。


「えーす遭難してたのか? 最近見なかったけど、私? 元気だよ」

 大きなグローブ、70cm位かな、この前上げた猪の皮で作ったようだ。冗談半分に殴ってきた。痛くなさそうだと思って受けたら、中からヤマアラシの針が沢山出てきた。

 すっごくびっくりした。街中だとHPは減らないがちょっと痛い。


「へへへー、作ったんだ凄いでしょ。名づけて初見殺し!!」

 確かに一度見たら警戒するから一回しか使えないけどね。発想力が凄いな、頭の良さは算数じゃないね。感心していると、いきなりすごい風が吹いてエルドワのスカートがヒラヒラと揺れて、チラッと見えた。

 風が吹いた方向を見ると、大きなフイゴのようなものがあり、空気を送り出す為に力を掛ける部分にコンタクトと数人の子供が乗っていた。


「名づけて、お花畑確認器、ッホゲ」

 コンタクトがエルドワにアッパーされている。他の子供たちは逃げ出して、エルドワが追っかけている。楽しそうで何よりだな。空気を貯める場所にも猪皮が使われていた。しかし、なんでこんな物を作ったのだろうか?


「そこに神秘があれば解明せざるおえない、ぎゃふん」

 エルドワが戻ってきて上からゲンコツを落としている。コンタクトの探究心が変な方向に行かないことを祈るしかない。さて、買取だ。


 溜まっていた薬草:生、毒消し草:生、合わせ草:生をそれぞれ六百個ずつ、薬草:乾燥、毒消し草:乾燥、を百個ずつ、合わせ草:乾燥を二百個受け取って、五万六千マールを支払った。

  

 机があったのでそこで調合スキルを使ってみる。確か薬草と合わせ草を十個ずつを纏めてと、MPが一消費されて薬草六個出来た。ローラントさんは、ほぼ十個出来ていたけど経験の差なのかな。

 同様に九回繰り返し実施してみて、五個か六個だった。薬草五十五個をポシェットに入れたら、既存とは別枠になった。なんで?

 

 毒消しも同じようにやってみるが、同様に五個または六個になって、合計五十六個の毒消しが出来たが、これも既存とは別枠になった。初期装備やお詫びで貰ったものと違うのかな?


 調合をしている最中、猪の肉をエルドワが焼いていた。調合が終わったので、私にも猪肉の串焼きをご馳走してくれた。エールラーケの屋台と比べても同じくらいに美味しい。


「エルドワは調理人だったのか」

 といったら、満面の笑みでお尻をバンバンバンバンと叩かれた。人に叩かれて喜ぶ趣味はありません、けど……。

 薪が足らなくなったのか家の壁をバキバキって外して燃やしてた。壊していいのかよ、てか壊せるのかよ。


「ん? 大丈夫だよ。コンタクトの家だから」

 ひっひどい……、どうやら冗談で、誰も住んでない家で壊す予定だったらしい。しかし、ワイルドだな。


「えーすさん。お話聞かせてー」「聞きたーい」

 子供たちが寄ってくるので、今日は空飛ぶ船の話、自動動く地面の話、自動で服を洗ってくれる箱の話をしてあげた。


「洗濯面倒だから、そんなのあったら良いねー」「空飛たーい」

 楽しそうに話し合っている。かなり打ち解けてきた気がする。スラムの子供たちとわかれて、”兎の餌”の称号をセットするためにギルドに向かう。



 ギルドの掲示板を見ると、薬草と毒消しの納品クエストがあった、一個で六十マールだ。薬草:生、毒消し草:生の緊急クエストを含めてそれぞれ受けて納品した。お詫びでもらった物や初期の物は納品できないようだ。

 “兎の餌”をセットしてギルドカードを返してもらったら、


「おめでとう。ランクがDにあがったよ。これからもがんばってな」

 ちょっと早く無いですか? このペースで上がったら、次のアップデートで、SSSとかSSSSとか、全く異なるランクαとかβとか実装されちゃうんじゃないの?

 まあ、アイゼンハルトまで行って帰って来れたからD相当といえばそうなのかもしれないな。


 夕飯までは経験値稼ぎだな。いつもどおりアルミラージ狩りだ。肉と皮はいい値段になるし、アルミラージの角が出ても、エールラーケの商会に預ければポシェット枠を圧迫しなくなったのがいい。

 


 夕飯を済ませてログイン。日本時間十九時半、ゲーム時間十九時。

 今日の昼間も良い稼ぎだった。今の経験値は十万二千七百三。マールは一千四百万弱ある。しばらくは、経験値稼ぎとかお金稼ぎとかしなくても大丈夫そうだな。でもするけどねw


 しばらく街をブラブラしていたら、前田から“ささやき”で連絡が来たので待ち合わせの場所に向かう。前田のリアル友人もゲームをしていて、一緒に狩りをする事になった。

 私の交友関係はNPCの方が多いので、段々とプレイヤーの知り合いも増やして行きたいものです。

 獣人虎男戦士で猟師の彼は“謙信”。多分上杉謙信から取ったのだろう。全身オレンジに黒色の線が入っている青年アバターだ。

 しかし何で虎なんだろうなあ。虎っていうと信玄のイメージだったんだけど、まあ個人の自由だしな。

 前田利家さん、と何度か呼んでいたら、


「名前は長いから省略していいですよ。前田でも利家でも犬千代でも、なんでもいいです」

 前田と利家は、まあ良いだろう名前の一部だからな。犬も良いや獣人犬だからね。千代ってどっから来たの? でも犬って呼んだら相当険悪な雰囲気になるだろうな。

 でも何でも良いって言われたから、私だけのオリジナルな呼び方もありかも知れない。

 “まだといえ”何を? “だし”昆布? ニタニタしていたら変な顔で見られたので、いつも頭の中で呼んでいる前田にした。

 謙信もさんは不要との事で、呼び捨てする事にした。当然話しの流れで、私も呼び捨てしてもらうことにした。

 

 ハンガクはんがくごぜんも来たので、四人でPTを組んだ。しかし三人戦士で、一人なんちゃって魔法使いだとバランス悪そうだな。


「今のところ戦士の方が有利と言われていますので、戦士の方が多いのは当然だと思います」

 とハンガクはんがくごぜんが説明してくれた。戦士は自分より強い怪物でも何とか戦えるし、同一レベル帯の敵を倒すのが魔法使いと比較して楽なので休憩が少なくて済む。

 魔法使いは、魔法を覚えるのに多くの経験値が必要になるため、レベルを上げるのも大変で、一人狩りは自分より格下で戦闘することが多いので苦労するらしい。

 世の中の魔法使いは大変なんですね。あんまり魔法を覚えると怪しまれるかも知れないな。ちょっと控えとくかな。


 隊列は前衛三人。前田、謙信、私、後衛はハンガクはんがくごぜんFAファーストアタック[最初に攻撃する人]は、ハンガクだ。

 この前も余裕だったが、謙信は剣を利用しているので、近くに来た敵をバッサバッサ切ってくれる。隙がなくなった感じだ。



 しかし、二、三戦したところで、


「なんか今日は経験値の入りが少し少ないですね」

 と前田が首を傾げてる。


「えーすさん。すみません今レベル幾つですか?」

 ハンガクはんがくごぜんが聞いてきた。あれ私のレベルとPTの経験値って何か関係あるの? え、あるんですか知りませんでした。

 どうやらLVが高い人がいると、経験値の配分が高い人に増えるそうです。


 PTで貰える経験値は正直どうでもいいのですが、今のLVを公表すると明らかに不自然。チートとか疑われそうだし。とはいえ脱兎を教えるまで親密かと言えば、まだそこまではちょっと……困った。

 論点をずらそう。今は敵を探す移動時間が無駄になっている。“兎の餌二”を覚えて、効率よく狩れば気にならなくなるし、初心者支援のためにLV四のままにしておく必要が無い。LV差が減れば経験値の配分も増えるし。[ここまでの思考は約三秒]


 スキルの話をして一旦街に戻り、皆LV五になり、私は“兎の餌二”を覚えた。

 街を出て数百mで、ゴブリンの集団が出てくる。難なく倒して剥ぎ取っている間に、次の集団が襲ってきた。更に別の集団まで現れた。

 一旦殲滅して、一息ついたところでもう少し先に行ってみる。敵が多い何てものではない、多分四集団か五集団位に囲まれて全滅した。


 いい作戦だと思ったのだが出る数が半端ない。これじゃ敵が出ても戦闘が継続出来ない。死に戻ると効率が悪くなる。うーん。


「じゃあ。もっと人を呼びましょう!」

 前田が提案してきた。PTは六人だからあと二人入れてもあれじゃ敵を倒しきる前に、また全滅すると思うんだけど。

 え? 違う? この前の兎狩りで知り合ったメンツや、そのへんの初心者含めて全員で狩ろうということね。


「でも、それじゃ分配はどうしますか? コントロール出来ませんよ。それにどの敵が誰と戦闘しているかなんて、あの混戦では確認しきれないと思います」

 ハンガクはんがくごぜんが慎重論を唱えた。ピロロロー。まあ確かにアイテムが貰える貰えないとか、これは私が戦っていた敵だと言い争いを始めたら厄介な事は確かだ。前田が少し落ち込んでるな、よし、


「これは内輪のイベントという事で、横殴りOK、ドロップは拾ったもの勝ち、敵を倒しまくる、経験値取得優先という条件で募集して、了解したものだけ連れて行くことでどうだろか」

 PT全員の合意を貰えたのでメンバーを集め始めた。私以外の人がね……。


 詳細は分からないけど、多分五十人くらいだろうか。街の外に向かって歩いていく。関係ないPTが何だあの集団は? って顔で見ている。


 戦闘が始まった。最初のPTが戦っている間に、また違う敵が現れた。まだプレイヤーの方が多いので狩れていない人がいる。

「ウォーターベール」をかけた状態で、全速力で少し前を走って戻ってくる。前から、四集団くらいのゴブリンが襲ってくる。

 HPを回復してから、今度は左方向に走りもどる。敵が襲って来るので周りに任せて、右方向に走りもどる。


「こいつはいいぞ、どっちを向いても敵ばかりだ。狙いをつける必要もない、とにかく撃てば敵に当たるぞ!」

 誰だろう? 弓を持っているプレイヤーが叫んでる。


 もう戦闘なんてものじゃない、戦争だなこれは。自分はPTを抜けて、敵を呼ぶ事だけに集中する。


 楽しそうに見えるみたいで、人がどんどん増えて今はプレイヤーが百人位いる。多いわー。やけになって走りまくる。

 走っている最中に敵に襲われるが難なく回避出来る。AIの回避が有効に機能しているし、AIのお陰で段々と避け方も分かってきた、人間慣れですね。


 途中、前田が危なかったので注意を促したら、


「なんで私は、その、略して呼んでくれないんですか? ずるいです。何でも良いので私も呼んでください」

 ハンガクはんがくごぜんが言い出した。


「それじゃあハンガクで」


「なんか半額っぽくて嫌です」

 えー。何でも良いっていったのに。だって半額でしょ? もしかしてミドルネームのようなものが含まれているのか? 切る場所が違うのかな。ハン、ガク、ゴゼンとか、韓国関係だろうか?

 他には“んん”かな、でもこれだと謙信と重複するから勘違いするかもしれない。しかし面倒だな私の脳内ではハンガクか委員長なんだけどな、


「そうかな? ハンガクって良いと思うけど、私は好きだな」

 半額や特売って凄い魅力的な言葉だと思うんだけどな。これでダメならハガゴンだな。


「ソッソコマデいうならソレで良いです。じゃあ私もこれからはえーすって呼びますね」

 といって喜んでいる。なんだかなー、これが噂に聞くチョロインって奴なのかな? 勘違いすると痛い目を見るので気にしないことにします。



 途中休憩を入れたものの、ゲーム時間二時、日本時間二十三時まで遊んで終了した。これはこれで楽しかったのでまたやりたいな。


 北門の冒険者ギルドに入ったら商会のNPCが居て、急いで商会に来て欲しいとのこと。


 商会に行くと眠たそうにしている商会長が待っていた。

「領主様から、今回の件で褒美を与えるので、えーと、既に日付が変わったから、今日の十八時に城まで来るよう申し付けられた」


 今日の十八時って日本時間七時なんですど。行かないって選択肢があるか尋ねたら、「ある訳がない」と言われた。デスヨネー

 謁見イベントは、ゲーム時間内で約一時間。日時変更する場合は、ゲーム時間で五日後以降、八時~二十時の間で任意設定変更が可能との事。

 日本時間で三日間もヤキモキするのも嫌ななので、提示された日程で受けることにしました。



 商会長が一緒に行ってくれるので、ゲーム時間十六時、日本時間六時に商会で待ち合わせとなった。今日はもう寝ます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る