第14話 反撃。
街に出るなり、レーダーを使ってゴーバインを捜し、反応のある方へ急行した。
反応を示した地点に機体を向け、前方の映像を拡大するとゴーバインは大の字に倒れていた。
つま先から顔に至るありとあらゆる箇所が損傷し、相当危険であることが一目で分かる状態にあって、黄ロボがトドメを刺そうと、目と鼻の先まで迫っていた。
「中原君、今援護するわ」
成実は、ウィングのミサイルを撃って、黄ロボの注意を逸らしながら、凪に通信を送った。
「天野さん、なんでっていうか、どうやって来たの?」
「その話は後、今はウィングと合体して」
「・・・・・・・・・・・・・分かった」
凪からの不満そうな返事を聞きながら、体勢を立て直してジャンプしたゴーバインにウィングと合体させた。
合体に合わせて、ウィング内のコックピットシートは後方内部に移動し、四十五度上に向きを変え、その後百八十度回ったところで、全面に映像が映し出された。
「ゴーバイン、動くのがやっとってくらいにボロボロじゃない」
サブモニターに表示される機体データを見ながら言った。
「一人で戦っていたんだから仕方ないだろ」
「すぐにリペアしないと」
「発射ブロックは破壊されているか瓦礫で塞がれているからスペアパーツは発射できないよ」
「発射できないなら、中に入ればいいじゃない! ゴーバインのコントロールちょっとの間もらうわよ」
ゴーバインの操縦の主導権を握った成実は、アイビームを連射して街の一画を集中攻撃して、大きな穴を空け、その中に機体を入れた。
そこは大量の武器とスペアパーツで溢れた場所だった。
「まさか、武器庫そのものに入るとは思わなかったよ」
「出せないなら、直接武器庫に入ればいいだけでしょ。設定に縛られてどうするのよ!」
「自分の考えを否定してどうするのさ。考えるのだって楽じゃないんだよ」
「そんなことよりも、今はスペアパーツを使って、ゴーバインのリペアをするのが先でしょ」
「そうだね。なら、最初に両肩から始めて。それが終わったらマグネットアームに換装するんだ」
「どうするつもり?」
「いいから」
凪の指示通りにリペアと換装を行った。
一連の作業を終えたゴーバインは両手からマグネットビームを出して、シールドを一ヶ所に集めた後、上に持ち上げて穴を塞いだ。
「こうすれば、作業に集中できる時間を稼げるだろ」
「確かにいい考えね」
こうして、ゴーバインの本格的なリペアが開始された。
リペア作業が進む中、穴を塞いでいたシールドの上から爆音が聞こえ、連続して鳴り響いた後、シールドは完全に破壊され、トマホークを持った赤ロボが武器庫に入って来た。
「来るのが早過ぎよ」
「簡単に修理させてはくれないみたいだね」
「修理しながら戦うしかないわね。わたしがリペア作業に集中している間、戦闘は任せても大丈夫よね?」
「僕はゴーバインのメインパイロットだよ。問題無いさ。これだけ武器があれば、相手の攻撃を封じることもできるしね」
凪は、言葉通り手近にある武器をマグネットビームで引き寄せ、赤ロボに近付けては自爆させるという戦法に出た。
「これなら邪魔はされないわね」
成実は、感心しながらゴーバインのリペア作業を行った。
武器庫に爆音が響く中、リペア作業を進め、徐々に元の状態に戻していった。
「これで相当無理ができる筈よ」
リペア完了メッセージを表示した画面を見ながら言った。
凪は、武器を飛ばし続け、赤ロボを追い詰めたかに思えたが、分離すると黄ロボになった。
黄ロボは、両方の二の腕を高速回転させてエネルギーフィールドを発生させ、続けて上半身も高速回転して全身をフィールドで覆うことで、自爆戦法を封じ、その状態のままキャタピラ走行で迫ってきた。
ゴーバインは、ジャンプして回避した後、フィールドの届かない頭上目掛けてパーツを飛ばして自爆させた。
それによって、頭部が半壊した黄ロボは回転を止め、ゴーバイン目掛けて両腕を伸ばしてきた。
「天野さん、パワーアームとパワーレッグに換装して」
「了解」
換装を完了させたゴーバインは、両腕を伸ばし、両手を組合せた力押しの状態に入ったが、パワーの方では黄ロボが勝っていたらしく、パワーアームは両方共握り潰されてしまった。
「パワーでは向こうが上みたい」
「分かっている。そうだ。マグネットアームに換装したら、パワーアームをありったけ取り付けて」
「それで勝てるのね」
「もちろんだとも」
「いいわ」
再度マグネットアームに換装し、言われた通りにマグネットビームでパワーアームをありったけ吸い寄せて、片腕に付き五本繋げた腕長の状態にして、再度黄ロボに力押しを挑んだ。
黄ロボが圧倒的なパワーによって、アームを一本一本潰しながら近づいて来る中、ゴーバインは両足のストッパーを地面に付けて、その場に踏み止まった。
「ブレストブラスター発射して!」
凪の合図に合わせて、成実はブレストブラスターを発射した。さっきまでの行為はブレストブラスターのエネルギーをチャージする為の時間稼ぎとフィールドを封じる作戦だったのである。
膨大なエネルギーが凝縮されたビームが迫ってくる中、黄ロボは腹部を開き、スクリューを高速回転させたエネルギー風を放射して対抗してきた。
二つの攻撃がぶつかると、光の粒子だけでなく稲妻さえも発生するせめぎ合いになった。
ゴーバインは、パワーレッグのストッパーを解除し、ブレストブラスターの発射を止め、その場からジャンプして、宙返りしながらエネルギー風と黄ロボを飛び越え、着地するなり跳躍の反動を利用して前方に放り投げた。
黄ロボは、地面に叩きつられる前に分離し、青ロボットになって上昇した。
「何をするつもりなのかしら?」
「多分、ここを爆破するつもりだ。そうはさせない! グラヴィティアームに換装して!」
末端肥大形状の両腕と換装したゴーバインが拳を青ロボに向けると、先端のパーツが展開して、そこからリング状のビームが発射され、直撃を受けた青ロボを上空へぶっ飛ばした。
上空で停止した青ロボが、真下を向くと武器庫の穴から出てきたのは、胸、肩、両手両足にバーニアの付いた高機動仕様のゴーバインだった。
青ロボが、高速飛行しながら攻撃を仕掛けるも、それ以上のスピードで回避し、背後に回って反撃してきて、二体は超速での空中戦を展開し、大空を爆球で覆っていった。
「このままじゃ埒が明かないわ」
「そうだ。もう一回分離させて、黄色のロボットに合体させられないかな」
「合体させて、どうするつもり?」
「僕に作戦があるんだ」
「一種に合体さたいのなら、接続部を破壊すればいいんじゃないかしら。もしかしたらできるかも」
攻撃を止めたゴーバインは、青ロボに背を向け、逃げるように飛んでいき、追い付かれたところで、速度を落として背後を取り、拡散式のブレストブラスターを発射した。
放射されるビームのシャワーの前に青ロボは、分離して攻撃を回避しよとしたものの、三機とも後部と主翼に損傷を受け、黒い煙を上げながら地上へ逃れていった。
「両手両足をドリルアームとドリルレッグに換装するんだ!」
「分かった!」
超速で地上に向かいながら換装を完了させ、三機に追い付くと黄ロボへの合体シーケンスに入っているところだった。
「今だ!」
ゴーバインは、二つに分離して、合体の真っ只中に突入した。
その後、地上には一つの機械の塊が出来上がっていた。
どうなっているのかというと、ゴーバインの上半身が黄と青、下半身は青と赤の間にねじ込んでいるのだった。
そして両腕のドリルを黄、両足のドリルを赤の戦闘機へ突き刺し、青い戦闘機は上半身と下半身のパワーで挟み込むことによって、三機の動きを完全に封じ込めているのであった
「これでもう合体できないだろ」
「いちいち分離なんかしているからよ」
「アイビームを三機に撃ったら、ゴーバインから脱出して!」
「了解」
言い終えるなり、ゴーバインにアイビームを撃たせ、首を動かして上から下に降ろすように発射して、三機に切れ目を入れていき、全てに入れたのを確認し、シートの真下にあるレバーを引いた。
そうするとコックピットブロックが後方部に移動し、バインウィングの上部が開くとブロックが射出され、凪と同時に脱出した。
数十メートル離れたところで、逆噴射がかかって緩やかに着地すると、ゴーバインは敵もろとも爆発して、跡形も無く消え去ったのだった。
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