ウォーターバックストライク
詩慧蘭
第1話 水流放て!1
「じゃあよろしく」
草木が生い茂っている山の中、茂みに隠れながら無線を終わる。
両腰につけた小型の水鉄砲を手に取ると少しだけトリガーを引いて水が出るかを確認する。
「よしっ」
水鉄砲の銃口から出た水が土を湿らせる。
「先輩たちはいつも先に頂上の小屋を占拠してから他を攻め落としてる。確実にここを通るからここで待ち伏せしていれば先輩たちを倒せる」
もし全員倒せなくてもあとはこころたちが人数的に有利な状況でやってくれると信じて。
心で勝ちまでの道すじをたてると、少し安心したせいか手の力が緩くなる。
軽く顔を出して辺りを見渡す。
「そろそろ来るはずなんだけどなぁ。そういえば今日は新しく部で買ったものが届くって言ってたような…それで遅れてるのかな?」
いったい何なんだろ?次の公式戦からは使えるものらしいけど。
風が草木を揺らしさわさわと音を立てる。そのとき無線が突如繋がった。
「
「なっ...!?」
無線は各学年で別々の回線を使用しているため他学年が使用しているということは一年生組は無線の言葉とおり...。
「……私一人では勝ち目がない。降りよう」
茂みから出ると来た道を少し駆け足で下っていく。
小屋の裏手を見下ろせるところまで着くとふと立ち止まる。
待って。先輩の性格からすると一人になった私に投稿させるなんてありえない。いつもなら複数人で囲んでぼこぼこにするはず。なのに今日だけどうして...。
風が二度通り抜けたとき、ふと頭の中で一つの結論が導かれた。
「新しいものが無線に何か小細工ができるものだとしたら...」
もしまだ一年生組が無傷であるということを考えたらこのまま小屋に行くと私だけがやられて一年生組が不利になる。仮だけど一年の司令塔である私がやられると死人に口なしの水銃のルールだと負けたようなもの。ここは冷静に考えて立ち回らないと。けど全然的外れなこと考えてたら...。
いや、司令塔として求められるのは決断力と即断力。自分のことを自分で信じなきゃ誰もついてきてくれない。前に先輩に言われたでしょ、しっかりしなさい私!
決心すると小屋には目もくれずに山を下りていく。小屋を通って降りるルートと小屋を通らずに下りる二つのルートのうち通らないルートを選び下っていく。山の麓には水希が入部している水銃部がある
部室前まで走っていくと腰につけていた水鉄砲を手に取る。
「間違ってたら司令塔はクビっぽいなぁ...」
そう思いながらドアノブを握った。
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