第24話 プール
朝から着替えて、水着を取り込んで荷物の中にいれて最終チェックをする。まあ、そんなに荷物があるわけじゃないんだけどね。水着とタオルとお金さえあればいいんだけど。
「遥! 用意出来たか?」
「うん。城太郎もいい?」
「じゃあ、行こうか」
二人で家を出ることなんてなかったのに、なんだか新鮮な気分。
話をしながら駅へ向かう。平日だけど夏休みだし人はいっぱいかなあ。とか、水着以外にボールや浮き輪も買って持ってきたけど人が多いなら使えないかも。とか、私の水着の話まで。水着はナイショと言ってみた。恥ずかしいから。だけど、余計にハードルを上げた感じになってる?
駅に着くと切符を買う。ここから誰かと電車に乗ったことはなかったなあ。いつも見送られてばかりだった。
城太郎と一緒に電車に乗り込んだ。後も会話は続く。晩御飯にはスイーツが美味しいと評判のお店に行こうと。なんだ城太郎が夕食に誘ったのはやっぱりスイーツのお供のためじゃない!
何度か電車を乗り換えてやっと着いた。もう開場時間は過ぎているから、今はまばらにプールに向かう人しか確認できない。空いてたらいいのにな。城太郎とプールの中で待ち合わせをして別れる。
更衣室に入り着替える。男の子って着替えるのがやたらに早い。尚也がいつもそうだった。私は急いで水着に着替えてパーカーを羽織り、タオルも一つとボールと浮き輪をビニールのカバンにいれる。ここは手首につけるバンドでお会計出来るシステムだから財布は貴重品入れに入れておける。携帯も財布と一緒に入れておく。
さあ、準備万端! 水着はセパレートなビキニタイプ。下はレース編みのスカートがついているから、上から羽織れば上も見えないし大丈夫だよね。……やっぱりなんか恥ずかしい。って恥ずかしがってる場合じゃない。城太郎が待っている。早く行かないと。
水着で待ち合わせをした場所に向かう。あ、いた。少し退屈そうに左右を見渡してる城太郎。色白だったのに向こうでも水着になってたのかな。少し焼けて細いのになんか逞しい体……って何見とれてるの!
「城太郎!」
「遥。遅いぞ」
「ごめん」
中はいっぱいの人だった。子供もたくさんいた。やっぱり夏休みのプールだね。
「これだとボールは無理だな。浮き輪膨らますとこ行こうか」
「うん」
無料で空気を入れる場所があった。少し並んだけど遅かったからか人数の割にすんなりと順番が来た。
「なあパーカー脱げって。これじゃ泳ぐのは無理だけど、でもそれじゃあ水に入れないだろ?」
「わかった。じゃあこれ持って入る時に脱ぐって」
確かにここまでせっかく来たのにプールに入らないのはね。
「さあ! 入るぞ!!」
「あ。うん」
恥ずかしいなあ。パーカーを脱いで荷物と一緒に柱のそばの水のかからない場所に置く。
「へえー」
「なにその、へえー、って!!」
「いや、その、意外?」
「何なのよ! それよりプール」
恥ずかしいんだからジロジロ見ないでえー!……意外ってなにがどう意外だったのよ!!
浮き輪に捕まり流れるプールで二人で流される。この人ゴミだとこれが精一杯の涼み方だろう。直射日光が入って来ないのが幸いしてる。屋内じゃなかったらあっという間にマルコゲになりそう。上半身だけ。
「こんなに人多いから昼ごはん早めに食べよう」
「うん。そうだね」
早めにその辺で買って食べた方がいいだろう。
城太郎は嬉しそうにヨーロッパの話をしていた。じっくり動いたようで三カ国しか回れなかったけれど、一ヶ月近く旅をした思い出を話してくれた。一日目も聞いたけれど一ヶ月の思い出はたくさんある。
「そろそろ出て並ぼう。順番待ちしてるぞ!」
「そうだね」
プールから上がる。結構流されてるだけだったのに体力使ったのかな体がだるい。
荷物のところにもどって体を拭く。パーカーを羽織り早速買い出し。空いているテーブルに荷物を置いて席を取っておく。席はどんどんなくなる。ギリギリだったな。メニューは焼きそばにラーメンにカレーと定番な感じ。すぐに買える焼きそばにした。
席に戻って二人で焼きそばを食べる。
「おい、遥! これ学食のチーズケーキよりひどいぞ!」
「城太郎ここで味は追求しても無駄。お腹が満たされるかが問題よ」
「晩は美味しいもん食ってやる!」
可愛いなあ。全く。そのわりには残さず食べてるし。
お腹いっぱいになったのでしばし飲み物飲んで休憩。夜って何食べるか決めてるんだよね。デザートに重点がおかれてるけど、スイーツも美味しいならきっと料理の方も美味しいんだろうな。
「そろそろ流されますか?」
「そうだね」
私はまた脱ぐ。城太郎なんか言いたそう。
意外ってなんなのよ!
そして二人で流される。ますます人数が増えてる。さっきは城太郎潜ったりもしてたのにもうそれもできそうにない。芋洗状態ってこういうことなんだね。と、一つ経験になった。
ただ流されているだけなのになんだかそれだけでいいのはなぜなのかな? まあ、あの長蛇の列にならんで滑り台なんかはしたくもないしね。城太郎も並ぼうとか並んでくるとは言わず私とふわふわと二人で浮き輪にしがみついて流されてるだけだ。
少しずつ人が減って来た。そろそろ夕方ぐらい。早めに食べたお昼のせいでお腹も空いて来た。
「腹減った! 遥は?」
「私も」
「じゃあ、上がりますか!」
「うん。そうだね」
プールから上がりもう体を拭かず、今さらなパーカーも着ないでそのまま出口に向かう。
待ち合わせは出たところの椅子。もちろん男女でくる人がほとんどだから待ち合わせ用に椅子があるんだろう。
今度は急いでも城太郎を待たせるだろうな。シャワーも浴びるしね。
「お待たせ!!」
「マジ、待ったぞ!」
「え!? ごめん」
「嘘。俺も遥が遅いだろうと思ってゆっくりしたから。それより腹減った!!」
一瞬焦ったよ。怒ったのかと思った。そういえば城太郎の怒ったとこ見たことないな。あ、葵もだけど。
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