雪国

@rosse701

停留所

冬。

拓けた青空を見た。


僕はひょんなことからバス停のブルーベンチに腰掛けていた。

向かいのラベンダー畑は雪に埋もれ、

積もった雪の間から微かに見えるラベンダーは滴る雪解け水が反射してアメジストのように銀世界を彩っていた。


全てが輝いている。


ただ、その華やかな銀の国が、僕を否定しているような気がした。


ボロボロになった心を強引に埋めるようにして、僕はベンチに不機嫌な顔をしながら横たわった。


そして乱暴に靴を脱ぎ、僕はそのまま眠りについた。




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目が醒めた。辺りはいつの間にか僕から身を潜めるようにして真っ暗になっている。


不意に、尋常でない冷たさの風が僕の体を目掛けて当たってくる。

知人から病気と言われる程に寒さへの耐性があった僕でも、流石に身に沁みた。


昼過ぎに買った缶コーヒーも、すっかり冷たくなっている。

動きたくない。そう思った。


また僕はベンチに横たわり、そのまま夜空を見上げることにした。


雪国の星空は綺麗だ。


南の方に、オリオンの星々が見える。

月の灯りが、僕を穏やかに照らしていた。



あれから一時間ほど経っただろうか。

僕は夜空に夢中でバスに乗ることを忘れていた。



まだ間に合う。



靴を履き、重い体を起こし、錆びた時刻表を見た。

幸いなことに、まだ最終バスは来ていない。


冷めた缶コーヒーを飲み干し、またベンチに座った。



だが殊更する事もなかった僕はまた、前から決められていたかのように

仮眠をとる事とした。


今度は若草色の枕付きだ。

横になると、ナイロンの無機質な匂いがした。


寝返りを打ち、瞼を少しだけ開け遠くを見てみると、宙に浮く怪光があった。

僕はぎょっとしたが、よく見ると遠くの山のロッヂの光だった。


項垂れるようにして僕はまた、瞼を閉じた。

最終バスに間に合うよう、祈りを捧げながら。





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