第9話 当たり前の平和

俺の目覚めはとても良かった。今日は西沢とテーマパークに行く日だから

寝坊するわけにはいかないし目覚ましをいつもよりも早めにセットして

おいたんだ。

起きた時間は朝の6時で7時30分に西沢の家に行く約束をしていた。

朝のうちに飯を食べて出かける準備をした。準備と言っても、

手荷物を入れるだけの小さなバッグと財布ぐらいだった。

支度が終わり、洗面所で顔を洗ってる時、家のドアフォンが鳴った。

まだ時間は7時ちょうどくらいで約束の時間より早かった。

「かつやくんいる〜?ちょっとはやくきちゃったんだ」

ちょっと待て、ちょっとどころか30分前だぞ。

あいつにしては早すぎるだろ。

すぐにタオルで顔を拭いてドアを開けた。

「お前約束の時間勘違いしてたのか?まだ30分まえだぞ」

「知ってるよ。でも楽しみだったからはやくきちゃったんだ」

「ちょっと待ってろ、今準備する」

部屋に置いたバッグを肩に背負ってすぐに家から出た。

西沢のカバンは修学旅行へ行くようなでかいリュックを背負っていた。

「お前、なんでそんなもの持ってきてるんだ?」

「え?そりゃテーマパークに行くからだよ。

荷物はたくさんあったほうがいいからね〜」

そういえば西沢の天然さを俺は忘れていた。

パジャマ姿ならともかく、テーマパークへ遊びに行くというより

旅館にでも行くような雰囲気だ。

「はぁ、さっさとお前の家に行くぞ。そのバカでかい荷物を

家に置いていくんだ」

「ええ!?せっかくパジャマも持ってきたのに」

「あるんかい」

こんな段取りをしながら俺たちはいつものように

2人で道を歩いて行った。

いつもと違うのはそのゴール点が学校かテーマパークかの違いだけだ。

道の途中でクラスの知り合いにあった。

そいつは俺とクラスが同じの牧野恭介だった。

「あれ、お前ら新城と西沢じゃんか。こんな休日に二人で

もしかしてデートか?」

「いや、ただ遊びに行くだけだよ」

「お前なあ、そういうのをデートって言うんだよ」

「そういうものかな?」

「あ、私あそこのコンビニでジュース買ってくるからちょっと待ってて」

返事をするまえに西沢はササっと向かって行った。

人の返事を少しは待っとけよって思う。

「全く落ち着きのないやつだ」

「でもそういうところが西沢のいいところだろ。

なあ、いきなりこういうこと聞くのも悪いんだがちょっといいか?」

さっきまでの牧野の緩んだ表情が真剣な顔になった。

「俺さ実は西沢のことが好きなんだ。だけどお前らを見てると言い出せなくてなんか悪い気がしてたんだ。仮にさ、俺が西沢に告白したら、お前はやっぱ怒るか?」

牧野とは学校で知り合った中で付き合いもそんな短くはない。

だが牧野が西沢を好きだということは全く気づかなかった。

「お前が本当に西沢のことが好きなら素直に気持ちを伝えればいいと思う。

たとえその結果がどうなっても俺は1人の友達としてそれを見守るだけさ」

「すまねえな、ちょっと気持ちを整理するわ。また今度飯でも食おうぜ」

「おう」

「お待たせ〜待った?」

「いや別に」

「じゃあ邪魔ものは消えるとするか。お前ら楽しんでこいよ」

そう言って牧野は去って行った。

「よし、俺らも行こうか」

「うん!」

これでいいんだ。俺はこの平和な日常がずっと続けばいいと思ってた。

だからこそ俺たちはこのままずっと何も変わらなくていいと思ってた。

だけどその当たり前の平和はずっと続くのだろうか。

俺はこのままでいいはずだとそう思い込んでいたんだ。











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