第3話 住み込み家庭教師生活。開始
「しかし、ずいぶん若い先生ですね。哀來お嬢様も同じ18歳なのですよ」
「そうだったんですか」
「ええ。男の先生でも同い年なら話しやすい面もあるでしょう。ところで先生はピアニスト界ではあの超が付くほど有名な青龍家のお弟子さんで、最近『青龍』をご襲名なさったとか」
「はい」
「そのような方に教えていただけるとは! とても光栄でございます。ところでどうして芸名で応募なされたのですか」
「音楽を教える身ですから。身も心も『青龍小夜』でなければなりません」
「なるほど。立派な心がけです」
俺は燕家の屋敷の中をベテランの風格をした哀來の執事と歩きながら話している。
舞踏会が開けそうなくらい広くて豪華な西洋屋敷だ。
どうしてここにいるかというと、今日から俺はこの屋敷の住み込みの家庭教師教師になったからだ。
採用試験は行われず、あっさり受かった。なぜなら。
「しかし、家庭教師を申請なさったのが先生だけだったとは。宣伝が足りなかったのでしょうか?」
「載せているのが会社のホームページだけというのはさすがに足りないですね」
「やはりそうでしたか。もし先生がご申請なさっていなければどうなっていた事やら」
なんと申請者は俺一人だったらしい。
なので採用試験は行われず、さっそく自宅研修初日から講師生活のスタートとなった。
スタートに至って、朱雀小夜だとばれないように言葉に気を付け、一人称も『私』にした。
燕家までは一人で荷物を持ってバスでやって来た。
着いた途端、この執事にいきなり更衣室に案内させられると燕家オリジナルの服を着させられた。ワイシャツの下に胸元が開く黒のロングジャケット、黒のスーツズボン、黒のブーツのほぼ黒一色のスーツを着せられた。
デザインは悪くは無いが燕家に仕えているという事実があらかさまに現れていて嫌な気分になったが怪しまれる事は無いだろう、という安心感も沸いてきた。
着替え終わると執事に『芸術室に案内します』と言われ、今に至る。
「しかし、隅々まで見ても立派なお屋敷ですね」
どこから見てもベルサイユ宮殿を彷彿とさせる。
「旦那様はバロック調のデザインがとても気に入っておりまして。この屋敷は一つの山をすべて切り開いて建築しましたから」
環境破壊的な発言だがどれほど大きいのかはよくわかる話だ。
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