夢物語・鬼ヶ山 鬼に好かれる者

ハマノン 一般人Aです

第1話 僕は弱虫だ。

僕は弱虫だ。

誰にも助けを求めることも出来ず、他人を助けることも出来ない。


僕は弱虫だ。

僕は小さい時に僕のことを攫いに来た鬼達に憧れだった両親が殺された。


僕は弱虫だ。

僕はその時、逃げた。追って来る鬼達から逃げながら。


僕は弱虫だ。

その時、鬼の動向を探っていた頼光らいこうさんに助けてもらった。


僕は弱虫だ。

鬼は憎い存在だと、僕は思っている。でも、それは間違っているとこっちに来て、

分かった気がした。


僕は今、頼光さんに引き取られて、鬼ヶ山の近くにある家に住んでいる。

そこには鬼が住んでいた。

僕は最初、怖くて鬼のことをちゃんと見てなかった。

僕の両親は鬼に殺された。鬼は見たくない、これは決意に決まった。

僕は頼光さんの御家に来てから、鬼と目線を合わせないように過ごしていた。

数年、それを繰り返した。

だけど、そんな中それを思わなかった頼光さんの弟子である、金辰晃司きんときこうじさんは僕にこう言った

晃司「おい、てめぇの過去には興味ねぇが、人と話す時は目を見て話せって親に言われなかったか?」

僕「・・・鬼だから」

晃司「・・・あん?」

僕「・・・鬼だから」

晃司「・・・おい、てめぇ、鬼だから何だ?いつもてめぇのために頑張っているじゃねぇか。てめぇの仇が鬼だからって、ここに住んでいる鬼がてめぇの仇とは限らねぇじゃねぇのか?」

僕「・・・鬼は全部、仇・・・!」

僕は涙目になりながら晃司さんを睨んだ。

晃司「・・・・そうかぁ・・・じゃぁ、歯ぁぁ食いしばれやあああぁぁ!」

晃司さんは僕の頬を思いっきり殴った。

僕は何室か殴り飛ばされたけど、あまり痛くはなかった。

鬼に襲われてから、痛みの感覚が鈍くなっていた。

晃司「・・・てめぇはたった数匹の鬼に立ち向かえなかった自分に怒っているだけなんだよ!てめぇは何もできねぇ!それは当たり前だ!ただのガキに鬼の相手何てできるかよ!」

僕「・・・・!」

そう、僕は僕自身に怒っていた。

今晃司さんに言われて改めて気付いた。

僕は自分自身への怒りを罪のない鬼達に向けていただけだった。

僕「・・・・だったら・・・僕は、何をすればよかったんだよ!!」

僕はがむしゃらに晃司さんに叫んだ。

晃司「・・・・強くなればいいんじゃねぇか。簡単で単純さ。強くなればいいだけ。こんな簡単なことをてめぇはしなかった。・・・そして、てめぇは逃げた!

周りの鬼の所為にして、てめぇは逃げた!違うか!!」

僕「・・・うぅ・・・!」

僕は胸に何かが刺さって、涙が出た。

僕「・・・僕は・・・あぁ・・今からでも・・うぅ・・・できるかなぁ!?」

僕は答え合わせをするように晃司さんに向けて叫んだ。

晃司「ああ、てめぇが頑張れば周りはちゃんと答えてくれる。・・・それに。」

晃司さんは僕から目線を放して、横を見た。

それにそって僕も目線を横に見ると

頼光「・・・・・・・・・」

いつも笑顔で何を考えているか分からない頼光さんが真剣な顔でこっちを見ていた。

晃司「・・・それに、てめぇは何故か鬼から好かれていやがる。」

僕「・・・え?」

僕は晃司さんを見ると、別の方向を見ていた。

僕は先ほどのように晃司さんが見る方向を見ると、

まるで僕達を心配するかの様な鬼達がいっぱいいた。

頼光「・・・そうねぇ。いつも鬼達に聞かれていたのよ。『どうすれば、あの人とちゃんと話せるのでしょう』って。」

僕は考えられなかった。どうして、僕を鬼は好いているのだろうと。

・・・そういえば、僕の周りにはいつも鬼が居たような気がする。

鬼がこの屋敷に居るのは当たり前だけど、各々の役割があるのに自分の周りに鬼が居るんだろうと。

晃司「・・・おめぇは好かれてんだ、鬼から。なのに、てめぇはそれに答えなかった。さらにてめぇはあいつらの好奇心に気付いてやらずに逆にそっぽをいつも向く。・・・困ったもんだよ。」

僕「・・・・え?どう・・して?」

頼光「・・・それはたぶん、貴方の心が特殊だからではないのかしら?」

僕「・・・?」

晃司「・・・鬼は昔から嘘が嫌いな種族だ。嘘を吐く者には決して許さず、

逆に真剣で嘘を吐かない者には好意を示す。それが鬼だ。」

それについては頼光さんに教えてもらったことがある。

晃司「・・・それに、俺達も嘘は嫌いだ。」

頼光「嘘は泥棒の元とは正に鬼のことよねぇ。嘘に対しては敏感でたまに心配になることもあるんだけどねぇ?」

僕は思考が追い付いてない。

なぜ?自分の心が特殊だから?どういうことだろう?

正直者・・・なのだろか?こんな僕が?

晃司「・・・そろそろてめぇの頭もヤカン見たいに沸騰しそうだから、言っておくが。」

晃司さんが一区切りをして、

晃司「てめぇは馬鹿正直すぎて、逆に騙されやすくて、鬼には好かれやすいってこった。」

僕はその言葉で、1つ疑問に思ったことがあった。

僕「じゃぁ・・・何で、僕は鬼に追いかけられてたの?」

そう、この家に来てからずっと思ったことだった。

何で自分は鬼に追いかけられていたのだろうか?と。

頼光「・・・それは、」

??「それは、儂から話しておこう。」

それは突然襖から入ってきた一匹の鬼が居た。

僕「・・ひっ!お、鬼!」

僕はやっぱりまだ鬼のことが恐いと思っていた。

晃司「・・・まだ、あんなに言っておいて怯えるのか?」

僕「だ・・だって!まだ、難しくて・・・」

晃司「・・・はぁ~・・・てめぇはとことん弱虫だな。・・安心しな。そこの鬼がお前に手を出したら頼光が黙ってないから。」

晃司さんと僕はチラッっと頼光さんを見ると

頼光「・・・・・・・・」

突然出てきた鬼に笑顔(目が笑っていない)で見ていた。

頼光さんの周りにはまるで怒りのオーラが漂っている感じがした。

??「・・・ごほん。あの時のことは本当にすまんと思っておる。

儂とて、あんな手は使いたくなかったんだが。」

突然出てきた鬼が何か引っかかることを言っている。

頼光「・・・早く言いなさい。・・でないと茨木」

そうっと、頼光さんが腰に下げてある刀に手を伸ばした。

茨木「すまんすまん、すぐに話して退散するから、それは止してくれ!」

茨木と呼ばれた鬼は焦るように謝っている。

頼光さんは渋々刀から手を放した。

茨木「・・・ごほん。お主があの時の小僧か。・・・儂からは謝ることしかできぬが。・・すまぬ。」

そういって、茨木と呼ばれた鬼は頭を下げた。

僕は何に謝られているのか分かっていないが、引っかかる部分があった。

僕「・・・あの時って、僕が追われていた時のこと?」

茨木「・・・それでもあるが、お主の両親を殺したのは・・・儂ともう1人じゃ。」

びくん!

まるで僕は心臓を思いっきり殴られたように跳ねた。

僕はマジで殺す!っていう気持ちで茨木と呼ばれる鬼を睨んだ。

僕には力がない。だから、今殺しに行ってもひらりと、躱すことができるだろう。

だから、僕は視線と意気込みだけで茨木と呼ばれる鬼を睨んだ。

頼光「・・・まぁ、怖い。・・でも、茨木が今まで謝りに来れなかったのも理由があるのよ?」

僕「・・・理由?殺した理由?」

僕は周りの重い空気に負けないために頑張って声を出した。

茨木「・・・それのことなんだが・・・今そのを出した者を連れてきた。」

どさり

縄でぐるぐる巻きにされた男がそこにいた。

??「俺は何もしていない!俺はただ、下っ端の鬼に力を貸しただけだ!

それ以外は何もしていない!」

縄でぐるぐる巻きにされた男が必死に弁解を叫んでいる。

茨木「うるさい、少し黙っておれ。」

茨木は小蠅を払うように男を蹴った。

??「ぐふぅ・・・」

男は気絶した。

茨木「こいつは下っ端の鬼に洗脳を施し、鬼化を強化され、お主の両親を殺した。それだけのことだ。」

僕「・・・こいつが・・・僕の・・両親を?」

茨木「ああ、そうじゃ。お主のにっくき仇じゃ。・・・どうする?」

僕「・・・僕は・・・」

頼光「その話は、私に決定権をもらっていいかしら?」

僕「・・・え?」

晃司「・・・そうだな。てめぇはまだ人に情けを掛けているようだからな。

こいつの処遇は頼光が決めてくれるだろう。」

茨木「そうじゃな。頼光が処遇を決めるのなら誰も文句は言いまい。」

僕「・・・え?・・え?」

頼光「では、私に処遇が決まったことだけど・・・貴方もいいわよね?」

頼光さんの顔が真剣な笑顔だったため、何も言えずに頭を縦に振ってしまった。

頼光「・・・では、この騒動は一旦中断にして、夕飯にしましょうか?」

僕達は外を見ると、すでに夕暮れ時になっており、みんな急いで自分の役割をすることになった。

晃司「・・・・どうだ。ここの鬼達は。やさしいだろ?今見ても。」

僕「・・・分からない。まだ・・ちゃんと向き合ってないから。」

僕達は夕暮れをまじまじと見ながら、今後について考えるのであった。

続く

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