第6話 ふにゃー



『ふにゃー』 

 赤みのさした頬のメイドは、緊張感という概念そのものが消滅したような様だった。


「ふぁー」

「……」

「あふぅ……」

「……」

「ふにゃー」


 仕事にならないかもしれない。


「その締まりのない顔を今すぐ戻せ」

「無理ですー。お風呂に入るとなんか、ふわふわしてとっても気持ちよくなっちゃうんです」


 なんか気持ち良くなられては困る。


「ご主人様が困るのは困ります。えいっ、しっかりしなきゃです」


 ぺしぺし。

 林檎の様な頬を自分で打つメイド。


 しかし、


「ふにゃー……」


 無駄のようだった。



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