48話「劣等感」
俺達は昨晩。
白竜姫が眠る古代遺跡から、帰還した。
そして今日。
朝食を取りながらニャムとンンに、古代遺跡に眠る白竜姫の話をしている最中だ。
村長の依頼に引き続き、またもや諸事情が発生したことを伝えた。
それにより俺達パーティは、お姫様の仲間の捜索でしばしの間、留守にすると伝えたのだった。
「可哀そうなお姫様だニャン。主、助けてあげるニャン」
「ンンも、休日返上して頑張るのん。マスター、休日出勤の手当てよろしくですのん」
そうか、今日は月曜日だ。
本来はアリスとンンの休日。
休日指定はしたものの、誰もがまともに休みを取れていない。
俺の世界にはブラック企業と言う言葉が氾濫している。
そうはしたくないものだ。
とは言え、今はどうしようもない。
「主、気にすることはないニャン」
「ニャムの言う通りなのん。お手伝いの村人達もいるのん」
そう、狼探索の間はハーベスト村から派遣されてくる村人達が、手伝ってくれている。
しかしなあ。
フェリエルが村人達を威嚇し、森への侵入を阻んでたのには理由があった。
先日、俺達が遭遇したキュクロプスから村人達を守る為だった。
ゆえに、もうこれ以上、村長や村人達に黙って働いてもらうに訳にはいかない。
特に村の狩人達には深刻な問題なのだから。
よし、賞金首の件は伏せて、村長さんには事情を話そう。
「ハジメ殿、どうやって捜索するのだ? これと言った手がかりもないのだが」
リシュアの言う通りだ。
そして昨日。
フェリエルから聞いた話をまとめると、王国軍からの攻撃にあったのは、俺達が邪神を相対してた時期ぐらいのようだった。
しかも王国軍の中には竜王を倒した猛者までいる。
その者達は王国軍とは一線を画してたとの話だ。
そして竜王城より難を逃れ、『迷い子の森』に差し掛かった手前で、王国軍の追撃に合い、仲間は散り散りになってしまったとの話だ。
「そうだなぁ……。まずは定番の情報収集だな」
リシュアの問いかけにパンをかじりながら、俺はそう返した。
「では、ハジメ殿が以前見たと言う、賞金首の張り紙から確認するのがよさそうだな。無事であるなら張り紙はそのまま、あるだろうし」
「そうだな。冒険者ギルドのお姉さんなら色々と、事情を知ってるかもしれない。途中、ハーベスト村の村長宅を訪ねて、それから冒険者ギルドに行ってみよう」
アリスとマリリンはもぐもぐしながら俺とリシュアの会話を聞いてる。
そして、マリリンが遠慮がちに言葉を挟んだ。
「ハジメ氏……。我は……お役に立ててるのでしょうか? 足手纏いではないのでしょうか?」
マリリンの眠り魔法は強力だ。
しかしながら、眠り魔法を使ったマリリン本人も眠ってしまうため、活躍してる実感が本人には皆無なのだ。
困ったことに昨日の件で、マリリンは更にパーティメンバーに対し、強い劣等感を抱いてしまったようだ。
つまり、自信喪失状態に陥っている。
「もう、細かいこと気にすんなって言っただろう?」
まあ、今は言葉で何を言っても無駄な感じでもある。
徐々に、自信を取り戻す機会を待つしかないだろう。
「マリリン、元気だしなよっ! マリリンの眠り魔法って、アリスの回復魔法と同じぐらい無敵だよっ!」
「そうだぞ、マリリン殿っ!」
「そ、そうですね……わたし……いえ、我がくよくよしてる場合じゃないですね……」
「おし、食事を終えたら出立するぞっ! ンンとニャム。魔城温泉をよろしく頼むぞ!」
ンンとニャムは元気よく返事した。
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