44話「ティモとユイ」

「魔王候補など、どうやって探せばよいのじゃ! さっぱりわからんぞ!」


 ティモは、いついた部屋がハジメの部屋だとも知らず、疲れてはベットの下で居眠りを繰り返す日々を繰り返していた。


 そんなティモはブツブツと文句を言いながら毎夜。

 街を徘徊している。

  

 日々、魔界皇帝の愚痴をこぼし、不満に思いながらも、本音は見慣れない世界に魅了されていた。

 そして今、ティモは繁華街を彷徨っていた。


「ちょっと、そこのお姉さん!」

「ぬぬ? 妾のことかえ?」

「そうそう、お姉さんだよ」

「妾に何か用かね?」

「よかったら、ちょいとお茶でもしないかい?」


 そう声をかけた男は、パッキンで耳にピアスをしたチーマーぽい雰囲気の男だ。

 男はティモの服装を舐めまわすように見る。


「もしかして、そこのメイド喫茶の従業員さんかい?」

「従業員? ……そう言えばハジメがニャムやンンに対して、そんな言葉を使っていたな」

「あら、違ったかな?」

「妾は従業員ではない。オーナーじゃ」

「ほうほう。社長さんでしたか」

「妾は社長はでない。社長はハジメだ」

「ああ、株主さんってことかな? まあ、いいや……」

「で、茶をするのか?」

「君、凄く可愛いけど、しゃべりがちょっとババ臭いね」

「ババ臭くて当然じゃ。妾は一万年以上生きているからな」

「ねぇねぇ、それって何かの面白いジョーク? 全然ウケないんだけど」

「そなたは妾をバカにしてるのか?」

「まぁまぁ、そう怒るならよ。君、可愛いからオレがおごってやるよ。ついてきな」


 男はピンクのネオンが煌めく通りにティモ誘導する。


「なんとも賑やかな場所じゃな」

「だろ? 実のところ、まんざらでもないんだろ?」

「妾は腹が減っておる。ここ数日何も食べてないゆえ」

「良い店しってんだぜ? チョメチョメしながら俺の獲物でも味わうか?」

「おっ! まことであるか! 妾は飢えておる。若いのよろしく頼むぞ!」


 男はなんてちょろい女だとニヤケながら、ティモを連れて建物中に入って行った。


 ――――この時、ティモの後をこっそりつけている者がいた。

 そしてすかさず声をかけたのだ。


「ちょっと、あんたっ! この子をどこに連れ込もうとしてるのよっ!」

「あんっ? なんだおめぇ?」

「私はこの子の保護者よっ! ヘンなこと、しようと考えてるなら許さないんだから!」


 そう声を荒げたのは、ハジメの妹のユイであった。

 勘のいいユイはハジメの部屋に、何らかの気配を感じ取っていた。

 そして気がついてもいた。


「そなたは誰じゃ? 妾はこれからこの者に、ご飯を振る舞って貰うのじゃ!」


 ティモは突然現れた少女に、尋ねた。


「なんだおめぇ? 知り合いじゃねぇのか?」


 男は腕を組むとユイに、顔を突きだし舐めまわすように観察した。


「あんたっ! ちょっと失礼ね! もう良いわ、あんたも、ちょっとこっちに来なさいっ! ご飯なら私がいくらでもおごってあげるわよっ!」


 そう怒鳴るとユイは、ティモの服の袖を強引に引っ張り拉致してしていった。

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