43話「氷姫」
「姫様?」
「我らの王。竜王様の娘だ。父を失った悲しみで姫君は、悲しみに暮れ、自らの身体を氷漬けにされたのだ。いつまでも、あのままの状態が続くといくら白竜とはいえ、命を落としかねない」
「その、お姫様を回復したらいいんだね。わかったよフェリエル。女神アリスティアが、その子を救ってあげる。今からでも案内するんだよ」
「かたじけない。恩に着るぞ小娘」
狼の話によると、その姫様とやらは、『迷い子の森』の奥地にある。
古代の遺跡にいるらしい。
とりあえず、ハーベスト村の村長さんには、まだ狼の件は伏せておいた方が無難だろう。
俺はそう判断した。
「んじゃ、ちょっくら森に行ってみるか」
俺の一言にリシュアが驚いた。
「ハジメ殿。あの森は危険だぞ。前回の反省も踏まえて慎重に行動するべきだ」
リシュアの言う事はもっともだ。
俺達のパーティってバランスって意味じゃ最悪だ。
まともな前衛職が誰もいない。
リシュアだって本来はエレメンタルマスターであり後衛職だ。
しかも精霊召喚力が日々弱まっている。
アリスにしても回復オンリー。
御大層に神器とか言ってたレイピアは、武具屋で鑑定してもらったところ、ごく普通のちょっと高価なミスリル製でしかなかった。
女神の威厳を示す為だけに、特別に光らせてるだけの代物だった。
よって攻撃力は普通のミスリル製のレイピアと大差がない。
マリリンの眠り魔法は強力だが、使えばこちらの戦力は半減以下だ。
俺以外、全員眠ってしまうからな。
しかも、マリリンは極端に恐がりだ。
いざって時には身がすくんで、呂律もろくに回らない。
ニャムの狩人の腕前はたしかだが、あくまでも魔城温泉の従業員であり、パーティメンバーではない。
ンンにしては、戦闘など無縁の話だ。
本来ならば、信頼のおける、屈強なファイターやクルセイダーがほしい。
まあ、ないものねだりをしても、しょうがないか。
「森の魔物を恐れる心配ない。かの森には我より強い魔物は存在せぬ。安心するがよい」
俺やリシュアが考え込んでると、フェリエルがそう言った。
「だ、そうだぜ? リシュア。準備でき次第、行ってみようぜ!」
「う、うむ……」
「ところで、アリス」
「ん?」
「魔力の方は回復してるのか?」
「うん、もう平気だよ」
「おっし! じゃあニャム。魔城温泉のほう頼んだぜ! それと手伝いに来てくれてる村人達には、狼の件は、まだ内緒なっ!」
「主、わかったニャン。頭を撫で撫でしてほしいニャン」
「……こ、これでいいのか?」
「あと、応援をかけといてほしいニャン」
「うん。応援は半日ほどしか効果時間が継続しないから、出かける前に村人も含め全員にかけていくよ」
「わかったニャン。よろしくニャン」
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