21話「禁則事項」

 翌日。


 俺達は冒険者ギルドの馴染のお姉さんに、一枚の紙切れを渡された。

 職員のお姉さんが言うには、これはある種の誓約書だそうだ。


「えーっと、どれどれ?」


 俺は手渡された紙に目を通す。


「冒険者ギルド始まって以来よ。こんなにも苦情が押し寄せたのは」と、冒険者ギルドのお姉さんは困った表情で苦笑いする。が、目が真剣だ。


 紙には近隣の者たちより集められた、苦情が綴られてもいた。


 ・無暗やたらに爆裂魔法で自然破壊

 ・墓地での死者への冒涜

 ・眠り魔法で巻き添えになった通行人


 最後に魔剣の使用も禁ずるとある。


「ど、どういうことなんですか? これ?」


 ポカーンとした俺であったが、冒険者ギルドのお姉さんに問いただす。


「見てのまんまよ。今後、爆裂魔法と回復魔法に眠り魔法? だっけ? あと魔剣の使用も禁止ね。それが飲めないとなると冒険者ギルドとしては登録を抹消するしかないのよ」

「で、でも……上の三つは何となくご迷惑をおかけしたってのはわかりますよ? でも最後の魔剣の使用を禁ずるってのはなんなんです?」

「それは王様から立ってのお願いらしいわ。苦情が押し寄せてるのは冒険者ギルドだけじゃないのよ。王様のところまで「S級冒険者が極悪なパーティに加わり魔剣を振り回しているとは何事だ」との声に、王様も苦渋の決断を強いられたってとこね。そこは察してあげて、王様も今は色々と大変なのよ」


 今後、冒険者ギルドでクエストの依頼が受けられなくなると、俺達は食いっぱぐれだ。

 渋々了承するしかなかった。


「ハジメ氏。これは困ったことになりましたね」

「これではロクにクエストもこなせぬな」

「ハジメが見境なくバンバン爆裂するから、こんなことになったんだよ」

「うむ。アリス殿の言う通りだ。あたしに任せれば良い場面ですら爆発させてヒャッハー叫んでたからな」

「でも禁止令がでたのは王都付近だけだろ? なら何も困ることないじゃないか」


 俺の言葉に一同が注目する。


「それに当座の資金もそこそこあるだろ? 別に今すぐ食いっぱぐれるって訳じゃねぇし。なあ、リシュア?」


 パーティで稼いだ資金は、とりあえずリシュアに管理を任せていた。

 俺のクラスチェンジの使ったアイテムは予想してた金額よりも高額で、悪い気がした俺は、リシュアが立て替えてくれた金額が帳消しになるまで任せている。

 みんなも快く了承してくれている。


「ハジメ殿……申し訳ないのだが、資金はもう底を尽きかけている」

「……え、そうなの?」

「クラスチェンジ用のアイテムと、ダンジョン最下層への魔法陣の使用料……それと、昨晩のアンデットクエストで稼いだ分以上の金を冒険者ギルドに徴収された。なんでも……あのオブジェクトを片づけるための費用だとかで……」

「うへ、そうだったの……じゃあ、あといくらほど残ってるんだ?」

「こ、今晩の宿代ほどなら……」


 貧窮し追いつめられた感はあっても、とりあえずは王都付近限定での禁則事項だ。

 それも永続的に禁止されてる訳ではない。

 今後の行いによっては解除される。


「じゃあ王都を立つか?」

「「「え!?」」」

 

 俺の提案に一同が驚いた。

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