16話「ぷにぷにマリリン」
「おい、アリス! 起きろ!」
よだれを垂らしながら、だらしない笑みを浮かべるアリスはしぶとそうだ。
こいつは後回しだな。
「おい、リシュア起きろ!」
「む、もしや……あたしは眠ってしまったのか? ハジメ殿は平気だったのか?」
「不思議と俺は平気だったよ」
俺は鼻ちょうちんを膨らます少女へと、歩み寄った。
残念なことに肘を曲げて寝てるせいで、肝心なところが見えない。
「おい、お前も起きろ! 俺たちは邪神じゃない!」
慌ててリシュアが止めに入る。
「ハジメ殿、何を考えている!」
「リシュア、大丈夫だって! また眠らされたら俺が起こしてやるよ」
「しかし、少々エロくないか? ハジメ殿」
「バ、バカッ! 誤解すんなよ! 決して触りたいとか、欲情したとかじゃねーんだからな。むしろリシュアの魔剣を見て、襲ってきたんじゃないのか? 事情を説明したらわかってくれると思うぜ?」
「ふーむ。ハジメ殿がそう言われるなら……」
「それよりもリシュアはアリスを起こしてくれ。俺はこっちの少女を起こすから」
「う、うむ、承知した」
華奢な割には柔らかい肌触り。うん、わるくないぞ。
寝顔も可愛いじゃないか。
頭も撫で撫でしてみるか。と、考えていたら頭上に痛みが走った。
「っ痛ぇじゃねえか!」
「これがハジメの好きなエロゲーなんでしょ? アリスはバカだから、あの時は意味理解できなかったけど、ハジメってプププのヒキニートの挙句、二次元萌えだったんだもんね!」
「おお、わかってきてるじゃねーか! 数日で、そんだけ理解できてるんなら上等だよ!」
「こらこら、よさぬか二人とも」
リシュアが止めに入るとアリスは「ふんだっ!」と、一言漏らし顔をそむけた。
「うーん。騒々しいのですっ! 我は不覚にもまたもや己の魔術で、眠ってしまったのでありましょうか? 汝らは我の敵ではなかったのですか?」
少女は目を擦ると大慌てで両胸を隠した。
「な、なんてことなのでしょうか! 寝ている我になんて不埒なことを!」
「ち、ちがう!!! それは違うぞ!!!」
「いや、汝が望むなら我はあえて受け入れよう」
スタスタとアリスがクローゼットに収納されていた衣服を持ってきた。
無言で少女に突き出した。
「ハジメ、この子は淫魔族だよ」
「淫魔族? それってサッキュバスってことなのか?」
「し、失敬な! 遠い祖先はそうであったかもしれぬ。しかし今ではその血も薄れ、こうして邪神復活を阻止するべく、見張っているのです! 淫魔などではありません! 翼も生えてません!」
少女はマリリンと名乗った。
どんな事情で邪神を見張ってるのか、そこはどうでもいい。
ただ可愛いと思った俺は、傍に置きたくてしょうがない。
「誤解も解けたんだし、マリリンだっけ? 俺達のパーティに加わらないか?」
「まことでございますか? 我の眠りが通じない汝がいれば、安心して眠り魔法が使えます。この際ですから、この隠し階段の先にいる邪神を、永遠の眠りに誘いましょう!」
そう言いながら着替え終わったマリリンは、とんがり帽子に外套を羽織り、魔女っ子スタイルとなった。
「さあ! 向かいましょう!」
アリスとリシュアが俺をジト目で見てた。
「ま、まあ、いいじゃないか?」
「別にダメとは言っておらぬ。仲間は多ければ多いほどよい」
「……だ、だったら、そんな目でみなくても」
「良かったね。ハジメ」
アリスの満面の笑みに殺気を感じた。
「み、みなさん。不束者ですが、よろしくお願いします」
「俺はハジメだ。よろしく頼むぞマリリン」
「はいっ!」
「あたしはリシュアだ。これからよろしくな」
「わたしは女神アリスティアだよ。回復魔法が得意なんだ」
俺達のパーティに眠り魔法のエキスパートの、マリリンが加わった。
隠し階段はマリリンが寝ていたベットの下だそうだ。
マリリンが握る杖が光ると地下へと降りる扉の封印が、解けたようだ。
「それでは皆さん。邪神討伐に向かいましょう!」
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