第二十三話「真相」

「い、今の……お……お前、お前がやったのか?」


 郷田は何が起きたのか理解が及んでないようだ。

 唖然としながら、一瞬先まで刀身があった部位を見つめている。


 俺は岩砲弾を高速で撃ちだした。

 ピカッと閃光を発し、流星のような尾を引いた瞬間には、鉄板を貫き、大地を削り取っていた。


 シャーロットすら何が起きたのか、思考が追い付いてないようだ。

 周囲の反応を窺ってると真っ先にシメオンのおっさんが、声を荒げ駆け寄って来た。


「ルーシェリア様、これは一体、何事ですじゃ!」

「暇つぶしだよ」

「……ひ、暇つぶし。ですと?」


 シメオンが間の抜けた声をだした。


「ああ、そうだよ」

「な、なんと! いくらルーシェリア様であっても、このようなことは許されませぬぞ!」

「どう許されないって言うんだい?」

「この決闘は神聖たる女神アリスティアの下によって行われてる決闘。それはすなわち、神を冒涜する行為! 王子とてこの罪状は免れませぬ!」

「ほう、この僕を異端審問にでもかけるつもりかい? 実に面白い冗談だよ!」


 シメオンは完全に興奮しきってる。

 あーだこうだと説教じみた屁理屈をこねてくる。

 あまりにも、うるさいので耳を塞ぎたくもなる。


「……クソガキがっ!」


 郷田が完全にぶちギレている。

 俺に殴りかかろうとしてるが、郷田は動けない。


「クッ、クッソ……またかよ……動けねぇ」


 俺は郷田の足元から胸のあたりまで瞬時に凍結させた。

 そして俺は間宮に向かって叫んだ。


「無詠唱の僕にはサイレントは通用しないよ」


 間宮は俺と同じ魔術の才がある。

 国家の認定では賢者とされている。


「あはは、バレていたんですね。恐れ入ります」


 間宮は爽やかに微笑みながら素直に白状。

 こいつはたしか、クラス一の優等生だった。

 特段絡んだことはないが、そう悪い印象は持っていない。

 間宮の隣にいる清家と骨山は茫然としていた。


「おいっ、おっさん! ネタはあがってんだよ!」


 7歳児には似つかわしい、地が出た言葉を吐いてしまった。

 俺も少々興奮しているのだろう。


 おっさん呼ばわりされたシメオンが激昂した。


「殿下! 今までの一連の流れをお聞きになられましたか!」


 殿下と言いながらもシメオンの視線が捉えてるのは、国王ではなくオースティン公爵である。


 こいつらはやはりグルだ。

 俺の中で確信に変わった。

 身動きができない郷田が罵声を浴びせてくる。

 正直うざい。


「ぐへぇ……」


 一発、殴っといた。


 オースティン公爵が俺の元へと歩み寄ってくる。

 それに釣られ、メアリーとウルベルト、フィルも駆け寄ってきた。


「ルーシェ様」

「坊ちゃん」


 メアリーとウルベルトが俺を守るように立った。

 フィルは俺に視線を飛ばし、シャーロットの元へと向かう。


 シメオンがオースティンに告げ口のように俺の罪状を述べる。

 その姿はやけに哀れに見えた。

 

 さあ、オースティンはどうでるのであろうか?

 俺を罪に問おうとするのだろうか?

 ところがそうではなかった。


 一言。

 俺に視線を移すこともなくシメオンに、一喝。


「実にくだらん余興だ!」


 そう言い残し、マントを翻す。

 ヴィンセントを引き連れ、この場を立ち去った。

 俺に恐れを成したのかな? なーんてな。

 調子に乗るのはよそう。

 シメオンはやつれ、地面に這うようにうずくまる。


 国王は一人残された。

 憔悴しょうすいしきってるのが見てとれる。

 王様にはフィルとシャーロットが駆け寄る。


 さて……これから、この郷田には洗いざらい吐いてもらう。

 竜王襲撃の真相についてだ。


 恐る恐る、清家雫と骨山が氷漬けの郷田に歩み寄る。

 間宮も彼らの後ろから、ゆっくりと歩いて向かってくる。


 あの日の晩餐会で郷田が自慢げに語った。

 竜王の側近の魔術師が土下座し、失禁したと。

 その魔術師は俺の嫁候補のドロシーかもしれない。

 だったら絶対、許せない。


 さーて、どう調理してやろうか。

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