難民に対する排他的な動きが加速する中で

シリアを中心に混乱を極める中東情勢。

そこから絶え間無く流出が続いている難民達。

先進国において、その難民の受け入れに対して排他的な動きが加速してきている。

勿論、その背景には、テロ対策であったり、難民が受け入れ先で大きな問題を引き起こしたりと、短期的な視野で見れば、自己防衛の面で仕方がないようには思う。

しかし、長期的な視野で見た場合、果たして、それが本当に、危険を回避する事に繋がるのか。


先ず、先進国における民主主義社会の中で我々は、自由であったり、人権であったり、様々なものを獲得してきた。

その一方で、環境破壊であったり、格差や不当な差別があったりと、様々な問題も生み出してきた。

そして、その様々な問題が結果として、獲得したはずの自由や人権を手放す事にもなってしまった。


そして、そのような事は、民主主義社会によって生み出された、負の遺産とも言えるのではなかろうか。

それが、社会の中で、より弱者を苦しめる事になり、それが社会の底辺で不満として積もりに積もり、その積もった不満が、手段を選ばない、というテロリズムに正当性を与えてしまったのかもしれない。


勿論、民主主義社会の中に居る我々は、当然に、そのような正当性は受け入れられるはずもなく、我々は我々の正義を以って、テロとの対決をせざるを得なくなった。

そのテロとの対決の中で、次々と難民を生み出す事にもなってしまっている。

それが現在の混乱に至る、大まかな経緯のように私は思っている。


そのように考えると、先進国とテロとの対決の中で生じた難民の、少なくとも半数は、我々先進国側で受け入れる必要もあるように私は思う。

難民の受け入れを拒否するのであれば、テロとの対決を止めるべきなのではなかろうか。

少なくとも空爆という手段は、考え直さなければならないように思う。


このまま、難民を生み出し続け、その上、難民の受け入れを拒否してしまったら、より先進国に対する憎悪を拡大、そして増長もしてしまうだろう。

それが結果的に、人をテロという手段に走らせてしまったりもするのではなかろうか。

難民の中から無限にテロリストを生み出す環境を作りかねない。


以上のように考えていくと、空爆に参加、協力をしている国は難民の受け入れをすべきだと私は考えます。

難民の受け入れを拒否するのであれば、空爆への参加、協力を取り止めるべきではないでしょうか。

更に言えば、空爆の中心にいる大国に対して、空爆を止めるよう、働き掛けも必要なのかもしれません。


しかし、現実には先進国側で空爆に対して、否定的な立場を明らかにしている国はカナダだけではないでしょうか。

そのような中で、世界各国で難民に対する排他的な動きが加速しているように感じ、その事に疑問を抱かずにはいられないのです。


確かに、短期的な視野で見れば、難民の流入を阻止さえすれば、先進国側における、テロによる被害や難民が引き起こす様々な問題のリスクを減らせるのかもしれない。

しかし、それでも我々がテロとの対決を続けている限り、難民は次々と、生み出され続けてもいるのです。


それは同時に先進国に対する憎悪を育みもする。

それを長期的な視野で考えた場合、今後、我々先進国とテロとの対決をより激しいものにしてしまう可能性もあるだろうし、そうなった場合、我々自身は元より、我々の子供達や孫達、子孫達が、テロの被害に遭う危険性を高めてしまう可能性もあるのではなかろうか。


勿論、先進国は先進国側で、他にも様々な問題を抱えてもいる訳で、難民の受け入れが、双方にとって良い結果になるとは限らないだろう。

だから、我が身可愛さに難民の受け入れを否定する事も、決して、間違いではないと思う。

また、未来の話をしたところで、何の意味もないと思われる方もいるのかもしれません。

それらもまた、一方の現実ではあるのだろう。

未来よりも今が大事だという価値観。


しかし、一方で、そのような価値観があるのであれば、もう一方では、そうでない価値観もあるのです。

未来に想いを馳せ、未来の為に今、出来る事は何か。

今を大事にするのは、未来の為である。

今の積み重ねが未来に繋がる。

そして、私は、そちら側で、その一人として思うのです。


例え、難民の受け入れが、一部で良くない結果を招く事になったとしても、我々の行動に因って、難民を生み出してしまっている以上は、冷静に難民問題と向き合って、可能な限り、難民の受け入れを前向きに考えて、取り組んでいく必要もあるのではないでしょうか。

また、その限界を拡げる努力も必要なように思うのです。

それが我々の未来を、より良いものにする。

そんな風に私は思う。


とにもかくにも今後、我々が、どのような方向へ進んでいくのかは、皆で考え、皆で決めていかなければならない事でしょう。

決して、この世界は、私一人や、この記事を読んでくれた方だけのものではありません。


後は皆で決めた事が、この世界全体にとって、より良い結果になる事を祈るだけです。


最後まで読んで頂いた方、いらっしゃいましたら、長々とお付き合い頂き、本当にありがとうございました。


転載元URL(2016.1.30)

http://next.spotlight-media.jp/article/242508246431012145

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