万年樹の旅人

０

　金色の焔を背に抱いた獣が、荒々しく迫ってくる。

　やつは獅子でもあり鳥でもあった。言えるのは、見たこともない姿の化け物だ、ということだけだ。

　長い体毛は風もないのにゆらゆらと揺れ、丸みを帯びた背には鬣などの体毛と同じ金色をした羽が生えていた。威嚇するような羽ばたきを繰り返し、大きな牙を覗かせる。牙の隙間からてらてらと光る涎が地面を濡らした。

　辺りは暗く、獣の金色に光るぎょろりとした双眸だけが煌々と輝いている。音も臭いも一切ない、無の空間だった。目を閉じたときに広がる闇――それにひどく似ていた。

　ユナは、立っているのか座っているのか、自分の体がここにあるのかどうかもわからなかった。意識は冴え、自分という存在が確かに在ることを自覚しているのに、体が常に揺れているような不安定な感覚に、今すぐにでも足元から底なし沼に落とされていくのではないかと恐怖に怯えていた。

　腕も足も顔も、何もかも動かせない。

　恐怖に目を閉じたくとも、それすらも許してくれないのだ。

　けれど、自分は確かにここにいる。

　それがどんなに不安で、どんなに恐ろしいか。

　夢だと、わかっていても。

（まただ。またこの夢……）

　獣がぐんぐんと駆けてくる。

　そしてユナの目の前で止まるのだ。

　獣の腕が伸び、長く黒ずんだ爪がユナの顔めがけて伸びてくる。喉元を狙って掻き毟ろうとする爪が、瞳が、獲物を捕らえて輝いた。爪はあと一歩のところで惜しくも届かず、金色の瞳が悔しそうにゆらりと燃えた。

　その瞬間、ユナの体は燃えたように熱くなる。瞬間的に目を瞑りたい衝動に襲われるのに、一度だって成功しなかった。かわりに額から、じわりと汗が滲む感覚を覚えるだけ。鼓動が、走り出すように速くなっていく。

　そうして、しばらく獣の爪が触れるか触れないかの距離の間に立たされながら、ユナは目覚める――はずだった。いつもならば。

　だが、今日は違った。

　爪が目の前まで迫ってきた瞬間、風が顔を撫ぜた。

　息をすることも忘れ、頭の中が真っ白になった。

　緊張と恐怖が、ユナの意識を支配した。額に熱い汗を感じ、それを獣の生臭い吐息が容赦なく冷やしていく。汗で濡れていない黒い前髪をふわりと舞いあがらせた。

　崖の上を綱渡りしているのかと思わせる表情だった。

　子供らしい丸みを帯びた顔の輪郭と、その反面すっと通った鼻筋もどこか暗い色を湛えた黒目の大きな瞳も、どこか子供離れしていた。ふと目が合った瞬間、どきりとさせられる印象を与える少年――それがユナだった。

　今にも泣きだしそうに顔を歪め、それでも恐怖を必死に我慢しようと唇を噛んでいた。

　心のどこかに油断があった。所詮は夢だと。どれだけ鋭利な爪であろうと、どれだけ凶暴そうな牙であろうと、自分の喉に届くはずなどないのだと。きっと、届いたとしても痛みも痒みもない。音も臭いも感じない夢の中で、感覚なんてものは存在しないのだと、そう侮っていた。目覚めた朝、後味の悪い心地だけが自分に与えられるだけだと。ずっと確信していて、疑ったことなど一度もなかった。

　だが、風を感じた瞬間、ユナはたとえようのない焦燥感に襲われた。それは死に対する恐怖だった。

　身体中に流れる血が沸騰したかのように熱く、そして一気にそれらが挽いていくのがわかった。ひやりとした汗が、眉間や背中を伝う。怖い、と叫びたくても声は出ることなく、かすれた呻きのような吐息が漏れただけだった。

（僕が何をしたっていうの。どうしてこんな夢をいつも……！）

　風が応えるように、ひゅうひゅうと泣いた。

　ユナがいつから夢を見るようになったのか、はっきりとは覚えていない。最初はただの夢だと思い、気にも留めていなかった。目覚めたあと、怖かったという思いだけがぽつりと胸に落ちただけ。だが、夢など見たことすら忘れた頃に、再び全く同じ夢を見た。音も臭いもない暗闇の中、たった一人で獣と対峙させられている夢を。獣の眸はひどく不気味で、ユナの目を刺し潰してしまいそうなほど強い金色の光を発しており、時おり何か叫ぶような動きを見せた。しかし音が聞こえない。臭いもない。

　なによりも、獣の声が聞こえたとしても、人間のユナには言葉を理解する能力は備わっていなかった。平凡で、少し貧しいどこにでもいる取り柄という取り柄もない少年だったから。しかし、獣の態度が自分に友好的ではないことは、幼いユナでもよくわかった。

　そういった夢がもう何年も続いている。

　夢を見て、記憶が薄れ恐怖も和らいだ頃にまた同じ夢を見た。まるで忘れることを許さない、とでもいうように。ユナの幼い体に心に恐怖を植え付けていく。まだ十五にも満たないユナのやわい心は見えない敵に蝕まれ、眠ることすら躊躇う毎日だった。眠ればきっと、またあの夢を見る。それは怖い。けれど、無情にも眠気はやってくる。

同年代の子供が教師に反抗するように、親に反抗するように、ユナはやつに対して頑なに拒み続けた。だが、そんな努力も虚しく眠りはやってくる。ゆらゆらと揺り籠に揺られているような甘い心地に包まれたと思ったら、この悪夢だ。

（何が言いたいの？　何がしたいの！）

　誰に向けて問いかけているのか、ユナ本人もわからずただひたすらに胸中で叫び続けた。

　そうして、どれ程かの時が流れた頃、すでに視界は涙で霞んでいた。泣くことは恥ずかしいのだと、いつも思っていたにも関わらず我慢できずにぽろぽろと涙をこぼした。喉の奥から嗚咽が漏れそうだったが、かろうじてそれだけは耐えた。息を吸って、唾を何度も飲み込んで、歯を食いしばったら少しだけ涙が止まる。そうして、涙に濡れた薄い景色の中に、獣の眸の強い金色だけが浮かんでいるように見え始めたときだった。

　まぶたに痛みを覚える程の、強い光が闇の空間を包んだ。反射的にユナは目を瞑る。このとき初めて自分の体が動いている、と自覚した。だが喜びの反対側で、どうしてだろうと疑問が浮かんだ。しかし答えを探すよりも先に、暖かい光がまぶたを撫でるようにして触れユナは目を開けた。

　気がつけば、元いた場所とは程遠い、金色に輝く森の中にユナは佇んでいた。

　思わず声が漏れてしまうほど暖かく、そして明るい場所。見たこともない樹木の枝は地に向かって伸びるように垂れ、生い茂る枝葉はどれも金色の光を帯びていた。ユナは繁茂する金緑の柔らかい草地を一歩、また一歩と進んだ。土の上を覆うように映える草のほとんどは細長く、歩くたびにユナの足首をくすぐり濃い土の匂いをふわりと漂わせた。草の隙間から覗く花は、今まで知った花のどれとも重ならず、風もないのにゆらり、ゆらり、と気持ちよさそうに揺れていた。ユナが通り過ぎると、まるで歓迎するように足元の花から金色の粒子がふわりと舞いあがる。どこからか、うっとりするほどの甘い香りも漂ってきている。この時点ですでに獣のことなどすっかり頭の中から消えていた。

　暗く陰湿な空気を纏うあの場所とは違い、ユナは実際この場に存在した。

　手も足も動けば、花の香りも土の匂いも感じ取ることができた。景色の中に自分の体だって、しっかり映っていた。

　ユナはもの珍しげに辺りを見渡しながら、ゆっくりと惜しむように歩いた。

　落ち着いてよく観察してみると、珍しいのは花だけではない。太い幹にぎっしり生えた金色の苔も、青いはずの空が金色だということも、そのどれもがユナの知識の外にある。普段の慎重で強い警戒心はどこにいってしまったのか、思わずユナの手がすっと伸びてしまうほど、映る景色は美しくとても心地よかった。

　指先に触れた幹はほんのりと温かく、重なり合う葉はユナが触れるよりも先に踊るようにして揺れていた。樹木や空だけではく、見るものほとんどが金色に光っている。漂う粒子が落ちたからなのか、地面の草から覗く地肌も所々うっすらと輝いている。

　歩き続けたユナの額にじわりと汗が滲む。季節でいうと、ちょうど春の半ばを過ぎたころと同じくらいの暖かさだろうか。着ている服の背中が、汗で張りつくのがわかった。

　やがていくらか歩いた頃。ユナが歩く先からさらに強い光を感じ、目を細めた。光と一緒に、甘い香りも強くなっていく。無意識に歩く速度が速くなっていった。この先に何があるのだろうという興味と、胸の奥から湧いて出るような焦燥感がユナを走らせた。

　知らず駆けだしていたユナに合わせて、光を弾くように艶やかな黒髪がなめらかに揺れる。

　なぜだか無性に泣き出したかった。声を上げて笑い出したいほど、嬉しくもあった。

　胸に迫り来る正体がわからず、ユナはただひたすらに走った。足がもつれて絡まりそうになりながら、どんどん近づく喜びに心が跳ねた。あの光の中心には、何があるのだろう。行けば、この正体不明の感情に、答えが出るかもしれない。

（あれは、なに？）

　近づくにつれ、金色の中心にある正体が遠目に見えてきた。この一帯に見える樹木を全部集めても敵うかどうか――それほどの巨木が。

　いったい、どれだけの人数を集めたらこの木を囲めるだろうと考え、あまりに人知を超えた光景に、息を呑んだ。

　しかし、目を疑ったのはそれだけではなかった。

　樹幹の中心より下部――ちょうどユナの目線を少し上げたあたり。樹木から分かれる枝と一体化していたのは、まだ若い女性の姿だった。

　枝のように伸びる腕、何も纏わぬあらわになった乳房、腰から下を覆う分厚い幹も、何もかもが巨木と同じく金色に輝いている。蔦や葉が、女性の体を縛りつけるように絡みつき、思わず見入ってしまうほど柔らかそうな肌に傷がついてしまわないか、ユナは痛そうに眉を歪めた。

　ユナの気配を感じ取ったのか、女性の伏せていた長いまつ毛がゆっくりとあがる。緑にも金にも似た色の大きな瞳が、じっとユナを見つめた。

　ユナが今まで出会った女性の中で、誰よりも美しい。

　けれど、ぎくりとさせられるほど感情が感じられなかった。視線はユナを通り過ぎ、ずっと遠くを見ている。だからだろうか。こんなにも綺麗な女性に見つめられているというのに、ユナは恐ろしさすら感じた。うなじにすっと氷を落とされたような、ひんやりとした冷たさに身が震えた。

　本当に、無意識だった。

　そろりと伸びたユナの指が、女性の頬に触れるか触れないかのとき、ハッと我に返り動きを止めた。

　その瞬間だった。

　今までユナを通して虚空を見つめていただけの女性の瞳が揺れ、水に浮かんだ水晶のように輝きを放った。眉が何かを訴えるように動く。

　腕を伸ばし、触れた、と思ったユナの指先は無を貫いた。

　ユナと女性との間に一枚、水面が張られているかのように、ゆらりと波紋を広げ、伸ばした指が女性の体を貫いた。腕も、頬も、唇も――触れる場所全てに波が揺れる。

　しきりに何かを告げようと、女性の口が動く。だが、あの暗く陰湿な空間にいたときと同じで、一切の音はユナに届いてこなかった。

　今にも泣きだしそうな女性の表情を見つめながら、ユナは唇を噛んだ。

　助けを求めているのかもしれない。

　身を刻むような痛みをたたえた眼をしていた。見ているだけで、自分も涙が出てしまいそうなほど辛い面持ち。けれど、彼女が何を求めているのか、何を訴えているのかわからない。声が聞こえなければ、手を差し出すことが正しい行動なのかもわからない。わかったところで、まだ子供である自分に何かができるとも、助けられるとも思わなかったが、それでも、もしかしたら何か手伝えることはあるかもしれないのに。

　自分はいったいどうしてここにいるのだろう。

　訴えかけている女性の瞳に激しさが増していくのを見ながら、ユナは泣きたくなった。

　獣と対峙させられていたときとは全く違う、もどかしさだった。

　――ジェス！

　突如聞こえてきた声に、俯きかけていた顔を上げ、目をみひらいた。

　はっきりと聞こえた声は、女性からだった。

　――ジェス！

　何度も名を呼ぶ声は、想像していたよりもずっとはきはきとした声だった。もっと、ゆかしい声だと勝手に思っていたユナは、思わず言葉を失った。

　女性はそんなユナの驚きを無視して悲痛な叫びをあげ続ける。声を枯らしながら何度も何度も同じ名を読んだ。ユナに向かって、ユナとは違う誰かの名を。

　ジェス、とユナに訴えながら、女性が細い腕を伸ばす。瞳にたくさんの感情をのせて。ユナはその中に強い期待の色を感じて、伸ばされた手を受け取れずにいた。伸ばしかけたユナの腕が、あと少しのところで硬直する。

――違う。僕はジェスじゃない。僕は――……。

「――ユナ！」

　机に伏せていた顔を素早く上げると、ユナの真正面に困り顔の女教師が立っていた。

　自分が今どこにいるのか、咄嗟に思い浮かべることができなかった。だが、目の前の教師や横長の木の机に、何人か自分と同じ歳の頃の少年少女を見つけて、初めてここが夢ではなく、現実なのだと思い出した。

　教室の一番左隅、ユナの左の頬に陽がさす。硝子の嵌められていない窓から、ゆるやかな風が流れ込んできている。

　そうだ。午後の授業の最中だった。すっかり微睡みに身を任せて深い眠りに陥っていた自分に驚愕すると同時に、恥ずかしさから教師の目を見ることができない。黙りこくったまま俯いたユナの耳に、聞き慣れた小さな笑い声が聞こえてきた。

「また遅くまで屋根に上って星を眺めていたんじゃないの」

　含みある声が、くすり、と軽い笑い声と一緒になって聞こえてきた。それに続くように、別の少年も笑いながら声を上げる。

「いつか月に行くんだーって、ユナはいつもそんなことばっかり言っているんだ」

「あれ？　月の裏側に街があるんじゃなかった？」

「どっちも変わらないじゃない」　

揶揄が飛び交い、嘲笑が教室の中に満ち溢れていく。ユナはたまらなく更に俯いて、開かれた本の中に視線を落とした。

　女性教師は溜息を漏らすと、静かに、と溢れた声を窘めると再びユナのほうへと向き直った。

「素敵なお話ね。でも今は私の授業の時間よ。もう少しだけ頑張って起きていてちょうだい。――いつかその月のお話、私にも聞かせてちょうだいね」

　柔らかに微笑って告げた教師の顔を、ユナは見ることができなかった。俯いたまま、いまだ止まない微かな嘲笑が、耳元でこだまして、授業が終わってもずっとこびりついたままだった。

　とぼとぼと、路に沿い歩くユナの影がゆらゆらと目の前を歩く。肩を落とし、影を踏み越そうと一歩踏み出せば、影はユナの更に先を行き、決して追い越すことはできない。気分の良い日ならば、自然と歩幅も大きく影を飛び越そうと躍起になるのだが、生憎この日はそんな気分にならなかった。

　すでに陽は西に傾き、都を煌びやかな橙色に染め上げている。背の高い教会の尖頭や、掲げられた十字架に陽光が反射して、時おりユナは目を細めた。広いレンガ造りの通りを馬車がいくつも通り過ぎ、車輪の音だけがユナの耳に残った。大通りに並ぶ美術館や画廊、少し歩けば学舎の何十倍の広さもある公園がある。有閑階級の者らが多いこの都は、いつも明るく賑やかだ。どれだけユナが落ち込んでいようと、その様子はいつも変わらない。通り過ぎていく人々が、ユナに投げやる視線すらも。

　麻の薄布でしつらえられた衣に、頭まですっぽり隠れるほど深いフードのついた羽織もの。衣と同じ素材で作られた、ぎゅうぎゅうに中身が詰まった巾着袋を肩から提げ、ユナは都を行き交う人たちの風采に思わずため息が漏れた。

　指を這わせたらするりと滑ってしまいそうなほど光沢のある衣も、光を弾く高価な石のついた装飾品も、ユナは一度も手にしたことがない。羨ましいとは思わない。だが、やはり一度くらい触れてみたい、着てみたい、と思ったことはある。貴族らが身に着けているようなものを同じように着れば、学舎で嗤われることもないのだろうか。都の人たちから浮浪者を見るような視線を投げられることもなくなるのだろうか。裕福ではない生活に、これっぽっちだって不満はないのに、家から出れば、裕福じゃないことで白い目で見られる。そんな現実に、ひどく悲しくなった。

　そうして歩けば歩くほど、都の喧騒と眩い明かりはユナの背後で小さくなっていく。代わって見えてくるのは、緩やかで穏やかな残照と暗い空に明滅する星屑。聞こえてくる小さな虫の鳴き声。肌を震わせる冷たい空気。それらが全て揃う頃、鬱々とした気分は薄くなりユナの家が近くなる。

　だが、この日は一向に気分が晴れることはなかった。

　ふとした瞬間に、学舎であった出来事を思い出す。

――夢を見るほど、深い眠りについたのは初めてだ。

　眠ればまた獣と対峙させられる夢を見るかもしれないという恐怖から、夜眠りにつくこと自体が怖かった。あの獣は一体何だろう。自分と関係がある夢なのだろうか。布団に潜り込んで目を閉じても、夜一睡もできないことは珍しくなく、授業のない昼間に少しだけ目を閉じることもある。

　その結果が今日の居眠りだ。

　時間と共に薄くなりかけていた、胸を抉るような感情が再び鮮烈にユナの心を蝕む。

　自分の何が悪くて、皆から陰口を叩かれるのかわからない。

　――月の裏側にもうひとつ世界があると信じていてはいけないのだろうか。月を見上げて、淡い想いを望むことが、そんなに可笑しいのだろうか。歳のわりに、子供じみていると嘲笑を受けなければいけないことが、悲しく苦しかった。それは、月の裏側にはもうひとつ世界があるのだよ、と教えてくれたラムザ爺さんが嗤われているようで、怪我をすることよりも空腹を覚えることよりも、一番に痛かった。裕福ではないという理由なら、もっともっと痛い。

　胸も目尻も熱を帯び、慌てて空を仰げば透き通るような青闇に、ぶちまけたような星がユナを励まそうと煌いた。

　もう、家はそこまできている。

　見慣れた風景、明かり。扉をあければ暖かな室に夕飯の香り。そして優しい笑顔。それらが雲ってしまわないよう、自分の胸の中にある渋い思いは決して外に出してはいけないのだ。

　ユナは大きく息を吸い込んで、家の明かりをしっかりと見据えながら歩き出した。