第11話
空っぽのまま。
空洞のまま。
何もない、器に。
愛を、悲しみを、喜びを、怒りを、憂いを、不安を、心配を、好奇心を
なんでもいい。なんでもいいから。
何かで埋めてほしい。何かで塞いでほしい。
この空っぽを。この空いた穴を。
この虚空を。虚無を。
無くしたい。いらない。
空いてしまったのなら、塞ごう。
空いてしまったのなら、埋めよう。
もう、元に戻せないのなら。
もう、空いたままになってしまうのなら。
自分で塞ぐ事が出来ないのなら。
壊してしまえ。崩してしまえ。
無かった事になど、できはしないのだから。
だったら。
もう一度、今度は自分の手で。
人の所為で壊れたのなら。
人によって壊されたのなら。
自分自身でも壊せるだろう?
自分自身でも崩せるだろう?
思うのは簡単で。考えるのも簡単で。
行動することがどうしてもできない。
動く事がどうしてもできない。
簡単な事のはずなのに。難しい事など無いはずなのに。
言うのも簡単で。聞くのも簡単なのに。
理解できているようで、何も知らない。
知っているようで、理解できていない。
何をしたいの?何が欲しいの?何ができるの?何が嫌なの?何が好きなの?
何が何が何が.........
堂々巡り。いたちごっこ。
何を聞いても、何を考えても、何を知っても、何を求めても。
答えは出ない。あったはずのものはない。
今まではどうしてた?今までは決まってた?
分からない。知らない。何も。自分の事なのに。
壊れて気づく。無くして知った。
空いた場所の大切さに。空いた場所の重要性に。
何が在ったのかさえ、分からないけど。
何が居たのかさえ、覚えてはいないけれど。
確かにそこには何かあって。確かにそこには何か居たはずなのに。
自分て何?自分て誰?
何者なのか?分からないまま生きていく。
何者なのか?知らないままで生きていく。
何者なのか?知りたくもない。分かりたくもない。
何者なのか?知りたい。分かりたい。
ずっと矛盾。ずっと平行線。分かりあうことなどできはしない。
拒否。拒絶。受け付けない。受け入れない。
許容。許諾。受け入れる。受け付ける。
やりたいことも、やることも。
したいことも、しなきゃいけないことも。
全部が全部大切で。全部が全部不要だったりする。
何もかも受け入れて、何もかも拒絶する。
何もかも信じ込んで、何もかも疑って。
何もかも模倣して、何もかも一から始めて。
生きてるって何?生きるって何?意味がある?意味が無い?
分からない。解らない。判らない。
必要とされたくて一人になりたくて。
離れたいのに離れられなくて。
傍に居たいのに遠ざけて。
仲良くなりたいのに喧嘩して。
嫌なのに良い顔して。
嬉しいのに悲しい。怒りたいのに冷静で。やりたいのにやりたくない。
悲しいのに笑ってる。笑いたいのに泣いていて。怖がるくせに近づいて。
全部矛盾。矛盾だらけで生きている。誰に乞われることなく生きていく。
楽しみたい、でも怖い。怖いのに、近づきたい。悲しいのに、怒ってて。
何がしたいの?何もしたくないの?
聲は聞こえない。どこに行ったのだろう?
聲は答えない。どこへ消えたのだろう?
今まで当たり前にあったものがない。
今まで当たり前にあったモノが居ない。
本当に?今まであった?今まで居た?
わからないわからないわからないわからない......
どうしてなんで?なんでどうして?
全部分かったふりで。分かった風に。
何もわかっちゃいなかった。何も知ってはいなかった。
分かってたら、こうはなってない。
分かってたら、壊れても戻ったはず。
壊れて元に戻るのは時間がかかるし戻らない可能性の方が大きい。
壊すのは一瞬。壊れるのも一瞬。
行動するだけ。ひとつ抜き去るだけで。
簡単に、崩れ落ちる。
簡単に、崩壊する。
もう、元には戻れない。還れない。
もう、戻って来ない。還って来ない。
それじゃ、作ろうか?
それじゃ、創ろうか?
それじゃ、造ろうか?
どれも合っててどれも違う。
これって戻るの?再生するの?
入れ替えられるの?取り出せるの?
無理。否。不可。不能。
できたらとっくにやっている。
できたらもう悩んでない。
できたらもう考えてない。
できたらもう......
空いた穴は塞がらず。
空いた穴は埋まらずに。
広がっていく、蝕んでいく。
徐々に。確実に。慎重に。
塞ごうともがけばもがくほど。
埋めようと動けば動くほど。
広がり浸食。喰い尽くす。
呑まれれば堕ちて。
吸収されれば終わりを迎える。
危うい綱渡り。命続く限り。
危うい橋を渡る。寿命が尽きるまで。
危うい人生。危うい生命。
どうしてこうなった?どうして自分なの?
恨み辛みはもうやめた。
憎しみなんて一瞬で。
忘れればいいと悟った。できたら苦労しない。
だから。
全て引きずって。全て背負って落として行こう。
気にして気にして傷ついて。
見て見ぬ振りなどできない自分。
構ってほしくて我武者羅に何かしたい自分。
自分が大嫌いな自分。
全部全部受け入れられなくても。
全部全部自分なのだろうから。
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