第21話 ご要望
次の日。
昼ごはんを食べ終わると、何度も箱を確認しに行こうとする三人を止める。どう考えても今が生徒達がアンケートに答えて入れる時間帯。ここで箱を回収したらダメでしょ? まあ、どれくらいアンケートに答える人がいるかは未知数なんだけど。
「放課後までダメ!」
嫌は通じないのになぜかダメは通じる三人。柏木君まで、すっかり榊に染まってるよ!
待ちに待ったらしい三人はもうそれぞれ集める箱を決めてたようで放課後の生徒会室に箱持参で登場。本当仲良しだよ。
生徒会室のテーブルにそれぞれアンケート用紙を出す。
ないんじゃないか一枚も。という私の予想を大きく外れてドンドンとテーブルに用紙が出てくる。こんなにも、みんな生徒会になんの用があるんだろう。
三人は満足げに箱を置く。
「じゃあ、見てみよう!」
それぞれに席について、用紙を開けて読む。
……
橘君への質問、柏木君への質問、なんだこれは? 生徒会に用なんてないじゃない! 個人的な質問ばかり入っている。静かに二人の元に質問を回すとさらりとゴミ箱へアンケート用紙は消えて行く。
あ! 榊にまで。私の存在は! っていうか付き合ってる様子が全く見えないからなのか? ここで意地になっても仕方ない。アンケート用紙を榊に渡そうとしてやっぱりやめてゴミ箱へと入れる。
さて、まともなのはあるのか? 鏡野さんは生徒会の誰と付き合ってるんですか? ってこれって隣の席の男の子の質問と同じだし。なんで……なんか虚しくなる。手にしていたアンケート用紙をゴミ箱へ入れ、次の用紙を見る。なんか不毛だ。
橘君と柏木君にまた回りゴミ箱へ入って行くアンケート用紙。無駄だ! 資源の無駄だよ! 生徒会室のゴミ箱があっという間にいっぱいになるよ。
あ、障害物競走面白かった。また次の企画楽しみにしてるって。榊はその企画を逆に要望してたのに。企画要望! とかのが良かったね。まさかの質問攻めとは。
無言が広がる生徒会室。いつもはあんなに雑談ばっかりなのに。カサカサ紙の音ばかり。
「お! 来た! なんか祭りを企画してだって!」
その何かが大事なんじゃないの?
気づけばテーブルに山のようにあった紙はゴミ箱へ。残りは障害物競走面白かったとかの感想。
「ねえ。その何かっていうのをどうするの?」
体育祭は終わった。文化祭は二学期だろうし。
「文化祭は?」
柏木君の回答。
「え? ないの? この学校には文化祭」
「ああ。音楽祭ってのが二学期にあるけど」
橘君の答えに、名前が違うある意味文化祭なのでは? って私の疑問を吹き飛ばす勢いで
「いい! 文化祭!」
あ、もう。人の意見など聞く気がないモードに入ってる榊がいるよ。
文化祭を体育祭のすぐあとにするの?
もっと小さな規模のものを予想していた私の希望は届かなかった。
あれ? あのコスプレ……文化祭用ではないの?……音楽祭用? 想像出来ないんだけど、コスプレする音楽祭!
ということでまたもや顧問の生徒会に対する熱が冷めないまま、文化祭へと突入する。
各クラスで用意してくれるので今回は楽チンだよ。
予算も先生が提示してくれたものを学級委員に伝えて終わり。楽だね。まあ、自分のクラスには参加しないといけない。が、やる気ないクラス。喫茶店で話がまとまる。よかった。無難だ。
なのに! 各クラスの案を集計した結果、ほとんどのクラスが喫茶店希望だった。
そこでまた話が練り直しとなる。クラスの案だと限界がある。特徴も出しにくい。ってことで今度はクラスではなくクラブでの出し物となった。これなら特色が出せるから。
文化祭意外と手ごわい。
と、ここでさらに問題がでてくる。帰宅部ははどうするの? と声が上がる。
ということで生徒会と帰宅部で喫茶店をやることに。結局私の元には喫茶店が巡ってくるのね。橘君は帰宅部の追っかけに苦労してる。それを見てる柏木君……嬉しさがにじみ出てるんだけど。
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