第4話 ブレない人
世の中は甘くなかった。みんな私から直接聞きたいのかな。あの伝言は余計に人数を増やしたのかな? メール登録も電話番号登録もしてない子からも連絡くるんだけど。私の個人情報はどうなってるの?
おかげで朝は寝坊して散々な目にあった。それもこれも元彼桐山のせいだ。榊の言葉は桐山には届いてないのか。
荷物との格闘時間が携帯が鳴り止まないので延びに延びた。
朝礼には間に合わず、ギリギリ一限目には間に合った。授業も教科書を見せてくれている隣の男子の肩に何度も頭が乗ってたみたい。電車の席の隣の人が寝て肩に頭が乗ってるよ状態だったみたいで、徐々に彼は椅子も机も離して私から離れて座るようになった。
放課後まで寝てたようだ。気づくと目の前に机が見えた。そして周りは静か過ぎるぐらい静かだし。起こしてよ! 隣の男子! 散々迷惑かけてたけど、寝てるのそのまま放置するな。
目をあげてあれ? 私の机に手が、両手を置いてる人がいる。机の両サイドをつかむように。手は明らかに男の手だ。ヤバイ先生?
だけど、すぐに気づく。制服だ。生徒か。なんだろう隣の男子か? 苦情かな。目をさらにあげてその男子を見る。
さ! 榊陸!
目の前には榊がいた。なんでここにいるの? っていうか、昨日気づいてたの? なんなの?
「よう! おはよう。香澄」
バッチリ私ってバレてるし。って、何? なにすんのよ。
ガチャ
榊のメガネと私のメガネがかち合う音がする。また人に気軽にキスを!
「邪魔だな。伊達だろ」
と言って私のメガネを取り、私の机に置く。
「そっちは?」
「俺のは本物」
「あの日メガネをかけてなかったのは?」
「コンタクト。メガネって高いからね」
コンタクトの使い道を完全に間違ってるね、こいつ。コンタクトはケンカの為に使うんじゃないし。
「その為にコンタクトしてたの? 面白いこと他にないの?」
「ああ、見つけた」
意外に早く見つけたね。でも、こいつの面白いは微妙そうだな。いやもう、完全に外れてる確率のが高そう。
「そう。よかった」
ここは触れないで話を終わろう。
「うん。だからアリスにも来てもらおうと思って。爆睡してるから困ってたよ」
そこは起こしてよ。そして、榊の面白い事になぜ私も加えるのよ。怖いよ。加えないで。
「え、嫌だ。なんで私もなの?」
「香澄が俺に言ったんだろ!『面白い事他にないの』って」
「それとこれとは話は別だし」
もう、帰ろう。帰り支度をしてる私を榊は見つめてる。諦めた?
「じゃあ!」
って言っても家は隣なんだけどね。
「うん。さあ行こう」
って、なんで? 私の腕を持ってまたどこかへ連れて行く。どう今の会話をとったら私が榊の話に合意した事になるの!?
もしくは最初から私の返事なんていらないのか、こいつには?
連れて来られた場所は生徒会室。
生徒会室の扉を開けて私を中にいれて椅子に座らせる。そこには四人掛けのテーブルに椅子が四つ。私をそのうちの一つにかけさせて自分は目の前に座る。
テーブルには名前がずらりと書いている用紙が置いてある。
「何これ?」
「二年生の名簿。所属しているクラブ名が書いてるから何も書いてない帰宅部の名前をチェックして。俺はこっち半分ね。香澄はこれ!」
って渡されてた名簿はクラス別になっていて、そこには名前がずらりと書いてありクラブ名も記入されてる。どうやらクラブを辞めた人には二重線で消されているみたい。ただしまた別のクラブ名が書いてある。こう見ると帰宅部率って少ないな。って! なにこれ? どういう状況よ?
「ねえ、なんで私が帰宅部の人をチェックしてるの?」
「明日勧誘して欲しいから」
「勧誘って生徒会に?」
「そりゃそうだろ。ここは生徒会室なんだし、俺は生徒会長で香澄は副会長なんだから」
副会長? そんな言葉今聞いた!?
「なった覚えないけど副会長」
っていうか生徒会長になったのか、榊陸! 面白いことって生徒会長? 生徒会?
「じゃあ、書記にする? それか会計? 生徒会には4人必要だって言われてさ、先生にこれを渡されたんだ」
役職が問題なんじゃない! すでに生徒会に入ってることが言いたいのに。
「生徒会の勧誘に承諾した覚えないんだけど」
「ええ! いいじゃない」
軽い、軽すぎだ。このままのノリで勧誘したら帰宅部全員生徒会に引き込めるよ。そうしたら私は必要ないし。
「ねえ、それ。いいの!?」
それとはマナーモードにしているが二人しかいない生徒会室だから響いて聞こえる
ブーブー ブーブー
という私の携帯の音のことだ。
「いいの。前の学校の子から。あの後どうなったかみんながしつこく聞いてくるの。別れてるって言っても納得しないし」
「この前俺が言ったのに?」
「彼が付き合ったのか、それとも本当に付きまとわれているのかわからないけど、その子と学校でもめて廊下で言い合いしたみたい。まだ私が好きだと言いたらしくて。みんなそれからしつこいのよ」
もう、授業中からずっとこうだった。みんなは一人ずつだがこちらは全部受けるんだ、いい加減解放して欲しい。
「ふーん。それでメガネをかけて、三つ編みしてるんだ」
そう言って榊はパッと手を伸ばして私の三つ編みをほどいた。
「あ、もう」
「面倒臭いことには巻き込まれない為にしてるんだろ?」
「いいでしょ? 別に」
「ダメ」
「何の権利よ!?」
「生徒会長の権利」
「……そんな権利、聞いたことないし……反対ならあるけど」
そう校則を守らせるとか。ただし、この学校には三つ編みをしないといけないという校則はないけど。
「そんなんじゃあ、勧誘できないだろ?」
「……勧誘のため?」
「大事な一つ目の仕事なんだ。頑張ってくれよ、ノルマとして一人勧誘だからな。きちんと書いとけよ!」
ぶれない人だよ。脱線してる話をきちんと元に戻してるし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます