とある日常

ケッスイ

第1話ワンデイ

俺の気分や感情いかんに関わらず今日も朝はやって来る。

「ひろしー起きなさい。遅刻するよー」

母の声が聞こえる。

俺の名前はひろしでは無いのだが、母は俺のことをひろしと呼ぶ。

「ああ...もう朝か」

俺は朝は苦手だ。特に月曜日の朝は特に苦手だ。

「ふぁ〜あ、ねむ...」と時計を見る。

8時15分を指している。

「ん〜」「ん!」

寝坊である。

「なぜ起こしてくれない!」

「えー起こしたよあんたが今日は創立記念日だって言うから」

「その理由今年だけで、俺3回は言ってるよな!」

こんなウィットに富んだ会話をしてから俺は準備を急ぐ。

顔を洗い、口をゆすぎ、制服に着替え、コーヒーを飲む。

「はぁ〜今日もコーヒーは旨い」

俺は甘党だ。コーヒーは甘くないといけない。




「あんたそんなことやってる暇あるの?」

「はっ!行ってきます」

家から近いという理由で選んだうちの高校はチャリで飛ばして8分程で着く。

しかし騙されてはいけない。この8分というのは、学校までであって、そこから教室まではまた時間がかかるのだ。

今の時間は8時20分だ始業は8時30分だ。なんとか間に合いそうだが油断してはいけない。あと1回で遅刻指導が入る。それは避けなくてはならない。

そんな事を考えながらチャリの鍵を外し。またがりペダルを踏み込んだ。

「うぉーーエクスカリバー!」

この時期は何かと叫んでおきたいお年頃だ。

今日はちと肌寒いが暑いよりはいい。俺は暑いのが苦手だ。

一枚羽織ってくれば良かったなと思いながら。坂道を登り。そして降る。

今の時間は8時25分およそ道を半分程来た。

ここで道は降りの続く道に入る。

少し肌寒い秋の風を感じながら俺はひた走った。残り時間はあと3分。

「校門が見えた!」

しかし校門からは斜度が30あるんじゃね(俺の所感)という坂道を登らなければならない。

登り登る登りに登って登りきる。

駐輪場にチャリをとめ教室までダッシュ。

ここで間違えていつも通り上靴を履きに靴箱まで行くと、間に合わないのである。

ので玄関で相棒のスニーカーを脱ぎ靴下のまま走る。

周りにはいつの間にか遅刻の常習犯の見知った顔が5人程いる。

お互い名前も学年も知らないが。顔だけは知っている。そういう人間関係もあるのだ。

そこでチャイムが鳴る!

チャイムの鳴り終わった時に席に着いていないと、例え教室にいても遅刻になるのだ。

うちの担任は厳しいのである。

チャイムの鳴っている時間はおよそ15秒。

「ふっ...間に合う!」

教室の前に着く

残り8秒

「勝った!」

新品の靴下+よく滑る廊下+スピード


=滑って転ぶ俺、鳴り終わるチャイム、静まり返るクラスメイト。そして、

「お前遅刻回数たまったから今日の放課後、遅刻指導な」

担任の追い討ちである。

「やれやれだぜ」

と俺は1人呟く。

やっぱり俺に甘いのはコーヒーだけだな。






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