第43話 恋している

 翌日、果歩に全てを話した。

「樹里! あんたそんな大事なこと! なんでなんにも言ってくれないのよ!!」

 ってすっごい怒ってたけど、

「安田君と上手く行って良かったね」

 と、涙目で言われた。ごめんね。果歩。

 でも、すぐに

「また、安田君も樹里の家を出たら……」

「大丈夫。それも話してるから」

「なーら、いいの。はあー。樹里の嘘つき」

「ごめん」

 そして、ついでのように類が家庭教師をしてることを話すと、今度は果歩の眉が上がった。

「樹里? 大丈夫でしょうね?」

「大丈夫!! 拓海がいるんだし。本当に大丈夫! もう平気!」

 そうもう平気だった。拓海と類とで三人一緒にいる時によくわかった自分の想いを。私が誰に恋しているのかを。


 *


 次の家庭教師の日、うちに来た類は私達を見た途端

「樹里、良かったね」

 と、言ってくれた。そんなに表情や態度に出てるのかな? でも、あの時の類の言葉……私の想いも、拓海の想いも類は知ってる様子だったな。

 が、私の勉強がスパルタなのは変わらない。でも、拓海と同じ大学に行くためだ! 頑張らないと。拓海は卒業したら我が家から出て行く、だからせめて大学は一緒に行きたい。拓海と一緒にいたい!


 あんなに微妙な雰囲気だった男子二人は打ち解けてるみたいに見える。なんだか私がすっかり取り残されてるんだけど。まあ、勉強も。

「じゃあ、樹里。ここまで解いて。この前の問題、何問か間違ってたぞ! ちゃんと見直しもするんだぞ」

「はーい」

 類先生、厳しいです。

「じゃあ、俺らはご飯を作ってくるから。樹里はちゃんと勉強するんだぞ」

「ああ。うん」

 拓海……拓海も先生みたいだよ。


 ガチャ


 二人は出て行った。

 あの二人……興味があった。拓海と類、二人は私がいないとこで何の話をするんだろ? 類には私達のことはなんにも言ってない……。

 なんか聞いてくるかと思ったのに、類は普通に勉強を始めた。


 そうっとまた部屋を出て行く私。懲りないな。でももう、爆弾なんてないだろうし……。


 キッチンの手前の廊下で声が聞こえて来た。

「樹里と、上手く行ったみたいだな」

 類の声。良かった。二人の間にあったあの険悪なムードはもうなくなってる。

「まだ樹里のこと好きなんじゃないの?」

 え? 拓海、何言ってんの?

「そう、見える?」

 なんで否定しないの? 類……。

「見える」

 拓海、そんな風には見えないから! もう昔のことだよ。類にとっては余計に。

「バレたか」

 え? え? ええ? 類、何言ってるの?

「樹里! いるんだろう? それでも俺が好きか?」

 拓海……。私がここにいるのバレてたか。

 私はキッチンに入って言う。

「それでも私は拓海が好きよ! 恥ずかしいこと人前で言わせないで」

 好きだった人の前で言わせないでよ!

「わかった」

 拓海は最高の笑顔で答える。本当にこいつは!

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