第42話 全部確かめる
あ、ふーんって言ったら、拓海にふーんで返してこられて話が終わってしまう。ちゃんと全部確かめたい。
「ねえ。じゃあ、全部本当だったの? デートもキスも全部……」
「ああ! そうだよ! 俺はな」
ああ、ちょっとしょぼくれちゃった、拓海……。あ、そういえば。凹んだ拓海を見て思い出す。
「あの、私が学校で泣いた後に吉田君が拓海が元気なかったって、あれって……」
「お前があいつをまた思い出して泣くから……もうどうしたらいいのかわかんなかったんだよ。そしたら、健太郎にあの場所のこと聞いて……一週間あの場所にいたのに、樹里なんか全然そういう感じじゃないし、マジで悩んでたんだからな!」
拓海が悩む……って。
「ウソ!? 拓海が?」
「俺を何だと思ってるんだよ?」
「え? あのそういう雰囲気じゃないんだもん」
「お前なあ」
信じられないけれど、嬉しい真実。めくってみれば何のことはない、全てが一点を指していたんだ。
「良かったあ」
拓海に抱きつく。拓海の胸にいていいんだという想いで胸の中が満たされていく。
「樹里……」
「拓海……あの卒業しても……この家出てっても……その……」
だけど確認するのが怖い……離れてしまったらどうなるんだろう……。
「変わらないよ。もちろん。こうなったら、一人暮らしするの早くしたいぐらいなのに」
え? 早くこの家から出て行きたいの?
「私と一緒にいるの嫌なの?」
「樹里に手を出せないだろ? おじさんとおばさんがいるのに」
と、私を抱きしめながら言ってるよ拓海。
「この状況はいいわけ?」
「え?……あ、ああ。これもダメ?」
ガシッと拓海にしがみつく。
「ううん。拓海ってそういうの気にしないんだと思ってたから。……ここがいい」
拓海の腕の中が心地いい。苦しい想いを抱えないで拓海の胸に顔を埋められる日がくるって思わなかった。
「樹里……っ くっつきすぎ!」
「ダメ?」
顔をあげて聞いてみる。拓海がどんな顔してるか見ようと思って。
フッと重なる唇。離れた唇が言う。
「樹里、限界だ! 料理しよう!」
なんの限界? なんだかわからないけど、お腹も減ってきてるしそうしよう。お腹が限界?
「うん」
***
ってことで、毎朝のキスは拓海の中ではセーフらしい。元々毎朝、家でも私にキスしていたみたいだしね。
晴れて私と拓海は本当に付き合う事となった。苦しい気持ちは消え去り、拓海の影のない過去を思って拓海のことを聞けない私も消え去った。
あの別荘は、拓海が中学生の頃に亡くなった拓海のお母さんの方のお祖父さんが所有する別荘だった。子供達の家族がそれぞれで利用するから部屋がたくさんあって、お風呂も一応男女でわけて作られた。プールも当時は幼かった孫達が遊べるように作られたそう。そう! プールに足がつかないは大嘘だった。怖がってた私を面白がってついた拓海のウソだった。拓海と暴れてる時に足がついたので判明した。怖がり損だよ。全く。
拓海はお母さんが亡くなったので、お父さんが別荘には少し行きづらくなったので、しばらく行ってなかったそうだ。その後、高校生になったら部活で忙しくなったりしてもっと足が遠のいてたらしい。
管理人さんはお祖父さんがスカウトした。もちろん料理の腕を買って。そりゃあ、管理人さんの料理、美味しいわけだね。
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