第36話 キスされている?
露天風呂からあがり、中に入って、水着を脱いでシャワーを浴びる。あー、でもちょっとのぼせてたのかな。冷た目のシャワーで体を冷やす。夏場に露天風呂はのぼせるのかな?
着替えてからキッチンで飲み物を飲んでると拓海がきた。拓海ものぼせてるじゃない。赤い顔してる。
「拓海、顔赤いよ!」
「あー、気持ち良くて入りすぎた!」
冷蔵庫を開けて飲み物出してぐびぐび飲んでる。やっぱりこの場所に慣れてる。知り合い程度じゃ絶対ないよね。ますます深まる拓海の謎。
*
夕食は拓海と作った。
「夏はカレーだ!」
「メニューは拓海がチョイス?」
「もちろんだよ」
「カレーって二人で?」
カレーなんて二人分難しいよ、あまりまくるんじゃないか?
「明日の昼はカレーうどんで夜はカレー鍋だよ」
ってか夏に鍋? そして……うどん?
もう完全に、はしゃいでるな拓海! 初日からカレー尽くしって。
***
こうして恥ずかしいやらドキドキやらで毎日拓海と二人きりで過ごす日々。もう自分の想いに歯止めなどかける余裕もなくなった。
五日目の朝、毎朝起こしに来ては至近距離な拓海はここに来ても変わらなかったけど、今日はインターフォンの音で目覚めた。え? 誰? と起き上がり部屋のドアをそっと開けた。玄関のドアを開ける音がして管理人さんの声がする。あ、五日目の朝だ。早っ! 仕事。管理人さんは働き者だな。
ちょうどいい、拓海がどうやって私を起こしてるか寝たふりで確かめよう。もう一度ベットに戻ってタオルケットを羽織って寝たふりをする。冷蔵庫に食材をなおしてるんだろうな、なかなか来ない拓海……ああ、ちょっとまた眠気が……。
と、うとうとしてたら
コンコン
ノックの音で目が覚めた。拓海ってばちゃんとノックしてるんだ。
「樹里! 入るぞ!」
拓海めっちゃちゃんと入るって言ってる。私はよほど爆睡なんだな。毎日。これは揺すぶったりされてるな……確実に。
カチャ
と、拓海が入ってきた。ああ、しまった。タイミングを逃して起き損ねた。拓海に揺すぶられた時に起きることにしよう。
目を閉じて寝たふりしてる私に近づく足音。ベットのそばに気配を感じる。なんか言うのか? 揺すぶるのか?
ベットに手をかける気配がしたと思ったら……キスされてた……一瞬だけど目を開けてしまった。拓海は目を閉じていたので慌てて目を閉じる。フッと唇が離れた時に目を開ける。そうだこの近さだった毎朝。毎朝私、拓海にキスされてたの?
「樹里?」
あ、バレたかと不安そうな拓海の顔。
「おはよう」
何となく気づいてないフリをしないとって、いつものように振舞う私。なんでだろう? 私達って拓海の女子よけの関係じゃないの? キス……なんでしたの?
「おはよう、じゃないよ。毎日毎日寝坊して! ほらご飯食べるぞ!」
「うん。着替えてから行くよ」
「じゃあ」
バタン
拓海はいつもの拓海に戻って去って行った。
はあー。どういうこと? たまたま今日してみただけ? うう、わからない。謎な拓海がまた謎を深めただけだった。ああ、私のバカ。余計なこと思いつくからいけないのよ。悩みが増えただけだった。
なんとか気持ちを落ち着かせて朝食をとる私といつも通りな拓海。あーもー、わからない奴!
それから毎朝目覚めてしまう。拓海が私の部屋をノックする音で。不審がってるから、寝たふりしたいけどまたキスされたら混乱するどころかバレて変な雰囲気になってしまう。そして、キスされなくても落ち込んでしまって元に戻る自信がない。残りの二人きりの時間をそんな風にはしたくない。というわけで、やたらに早起きな私が出来上がってしまった。
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