第六節; One hundred and eighty.

「びぃ~、ぐすぐすっ」

ポケットティッシュを使い散らして、結魚ユナはようやく落ち着いた。

かわいいな。

サラサラ黒髪ツインテールで。

人形みたいなおすまし顔で。

真面目で。

励ましてくれて。

でも泣き虫で。

今にも崩れそうで。

「敵、静かの凍結だっけ?」

「それは結果で、ヌシは別におるのじゃ」

人形のようなきれいな顔には、目と鼻に赤みが残っている。

「誰?」

「分からんのじゃ。予言によれば、目的は阻止ではなく修復なのじゃ」

「そう……。宇宙って夢があっていいよね」

「ゆ?」

「好きでさ。生き物に寿命があるように、熱を持つ宇宙にも寿命がある。有限のエネルギーでは無限に広がる空間を暖めきれなくなるんだ。僕らは宇宙が熱を持つ限られた時代にだけ生命イノチの鎖を繋ぐことができる。それを越えたら、宇宙は静かに凍えるだけだ」

「ゆゆ……」

「でも、まだその時じゃない。結魚も僕も、世界だって、まだ熱を持っている」

「そ、そうなのじゃ!振るえ、振るえ、命よ振るえ、なのじゃ!」

「だから、やるよ。世界に熱を取り戻すよ!」

「うむなのじゃ」

……君の為に、君が必死で守ろうとしているから、僕も精一杯やるんだよ。

「僕たち、絆で結ばれた仲間かな?」

「そそそそそ、それは……」

結魚が顔を真っ赤にして恥ずかしそうに付け足した。

「それは……百八十紐モモムスビアマリヤソムスビなのじゃ」

「……何?」

「〝百八十紐〟と書いて、ももむすびあまりやそむすび。しっかり結ぶという意味なのじゃ。その……絆と言うならの、そういう絆が良いのじゃ」

「長いね!百八十紐モモムスビアマリヤソムスビかあ!うん!力を合わせて頑張ろう!」

「が、頑張るのじゃ!」

例えば、一人こもりアニメ絵を描いてるとしよう。

ある日突然、同じ目的を持つ同志と巡り会う。

それは最高級の幸せだ。

相手が好みの女の子なら恋に落ちたっておかしくない。

そうだ。僕は結魚に恋してしまったんだ。

こうして、結魚と僕の、世界に熱を取り戻す為の冒険が始まった。

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