第4話 GPS心霊写真アプリの罠
地図によるとこの辺だけど……。
あったここだ。目標のスポットでスマホのカメラで写真を撮る。写真には幽霊が写り込んでいる。
これはGPSを使用した位置情報アプリで、事故や事件なので実際に人が死んだ場所で写真を撮ると幽霊の女の子が合成されるというものだ。もちろん本物じゃない。CGで描かれた
アプリは地図になっていて、実際の地図上に心霊スポットが表示される。心霊スポットは霊力ステータスによってランクが異なる。
写真に写り込んだ霊娘の画像はとしてコレクションすることができる。今、このGPS心霊写真アプリが一部で大人気だ。
このアプリは正式なストアでは手に入れられない。僕も友達から紹介してもらったサイトからダウンロードしたのだ。
最初は、電話帳の登録やら、写真へのアクス許可やら怪しい感じはしたけど、みんなも使っていて面白そうだしやり始めることにした。今では集めた霊娘の数も増え、手放せないアプリとなっている。
この土日、僕は新聞に載っていたバラバラ殺人事件の現場を回っている。新聞に載っていたのは五ヶ所だ。
カシャ! ここは左脚だった。今まで四ヶ所まわったところでは、右腕、左腕、右脚、胴体だった。頭はまだ出てこない。新聞に載っていた五ヶ所には頭は無いのか?
今までのパーツを地図にプロットしてみた。胴体を中心に見事に五芒星を描いている。五芒星として欠けているのは頂点の部分だ。頭はきっとそこにあるはず!
これは新聞には載っていない情報だ。きっとまだ誰も知らない。
急いで行って、霊娘をゲットしなくちゃ!
外は暗くなってきたけど、居ても立っても居られなくなり家を飛び出した。アプリの地図で見ると、目星を付けた場所の近くに確かに霊力ステータスが高いスポットがある。
この辺かな? カシャ! 写っていない。
こっちかな? カシャ! 写っていない。
ここかな? カシャ! 写っていた!
頭のパーツが写っていた。これで霊娘ゲットだ!
たぶんこの霊娘をゲットしたのは自分が初めてだ。思わず顔がにやけてしまう。こんなところを人に見られたら変な人に思われてしまうかも。
「ちょっと君、いいかな」
声をかけてきた人は警察手帳を見せてきた。
二人組の刑事だ。
「ちょっとスマホの中を見せてもらってもいいかな?
……こ、これは」
「被害者の死体の一部の写真ですね。先輩」
「しかも、報道規制が敷かれて公開されていない被害者の顔まで」
「やはり、犯人は現場に戻ってくるもんですね。先輩」
「重要参考人として、署までご同行願えますか」
スマホの中の写真を見ると、霊娘は一人も残っていなく、リアルな死体の画像に置き換わっていた。
後日、家宅捜索された僕の部屋からは凶器に使われた刃物と返り血を浴びた服が見つかった。
僕じゃないんです。信じてください……。
僕の悲痛な叫びが、冷たい留置場の中に響き渡った。
容疑が晴れてアプリをアンインストールした今でも、友達のところに僕からの招待だというアプリの招待メールが届いているらしい。今こうしているあいだにもアプリはどんどん広がって、僕のような冤罪者が増えていくことだろう。
僕からの心霊写真アプリの紹介メールが届いても、どうか開かずに削除してください。
うっかりインストールしてしまうと、あなたのまわりでよくない事件が起こるかもしれませんよ。
GPS心霊写真アプリ 楠樹 暖 @kusunokidan
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