第3話 チュウニビョウ
今このおっさんはなんて言った。
ここは俺が住む白水町ではなくフローラルという街で、日本ではなくファンタズムとかいう場所だって?
レベル高すぎるだろ
現実味が無さすぎて、どう考えても中二病の台詞にしか聞こえない。しかもその言葉を言ったのは、三十~四十代ぐらいの見た目をした、かなりいかつい顔のおっさんである。
目覚めた時は、何か事件に巻き込まれたのか不安になったけれど、今は違う。いや、不安な気持ちが増したのに違いは無いけれど、違った心配が込み上げてくる。
この中二病のおっさんからどうやって逃げるかということである。
よくよく考え見れば、こんな訳のわからない張り紙を部屋中に張り付けている時点で気づくべきだった。アニメのポスターやアイドルの写真を張り付けるのとは訳が違う。
仮説だが、おそらく中二病をこじらせた末になんらかの儀式にでも使うために俺を連れ去ったのだろう。
おそらくそんなところだろうと結論を出す。
こうしちゃいられないな
早いとこ人通りの多いところに出て助けを呼ばないと
「あのーすみませんやっぱり体調まだ良くないみたいなんで、とりあえず病院行ってきます。あっ、自分の足で行けるんで呼んでもらわなくて大丈夫です。すみません、なんか色々お世話になって、今度お礼に来ますんで」
そう捲し立てるようにおっさんに告げると、俺は逃げるように建物の扉を開いた。
「……は?」
.他人から見ればそうとう間抜けな顔をしていただろう。
しかし、それも当然と言える。
なんてったって、目の前に広がっていたのは、簡単に表現すれば西欧風と言えるような、ヨーロッパに広がっていそうな街並みに、馬車や馬が行き交い、空には飛行船のようなものが飛んでいた。
「なんだよこれ」
そして豊満な花の香りが、立ち尽くす俺を包んでいた。
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